DVDでアニメ映画『茄子 アンダルシアの夏』(2003年、脚本・監督:高坂希太郎)を鑑賞。アニメ業界きってのサイクリストとして知られる高坂監督がつくった、自転車ロードレースを題材とした作品として話題になった。原作は、黒田硫黄の短編漫画集『茄子』に収録された「アンダルシアの夏」である。劇場公開された作品だが上映時間47分だった。
主人公のペペ・ベネンヘリ(大泉洋)は、故郷近くで開催される世界三大自転車レースの一つ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」にアシスト・レーサーとして参加していた。今シーズンの成績の悪さから契約を切れようとしており土壇場である。その頃、ペペの故郷では、彼の兄アルヘル(筧利夫)と、ペペのかつての恋人カルメン(小池栄子)の結婚式が行われていた。レースはペペのチームのエースが負傷したため、好位置につけていたペペがそのままゴールを狙うことになるが……。
数々のジブリ作品で宮崎駿の右腕を努めた高坂監督らしく、作画やキャラクターがジブリ調である。好みが分かれるところかもしれない。なお制作にはジブリは絡んでおらず、マッドハウス制作である。監督の個性が色濃く出ているというべきだろう。
原作が短編だったこともあり、話がシンプルでわかりやすいのがいい。尺は短いが熱い映画でよくできている。レースのクライマックスの作画はやりすぎかと思ったが、後日原作を読んでなるほどと納得した。
レースの実況アナや解説者の声が素人で気になっていたが、声優ではなく本物のアナウンサーや自転車レースの関係者だった。作中、あまりの素人ぽさに声が浮いているような気がしたが、自転車レースが好きな人はリアリティを感じるのかもしれない。他の配役でも声優を使わないのはジブリ流なのかと思ってしまう。
余談だが、配役では大泉洋と小池栄子が共演していることに注目したい。今年の大河ドラマで頼朝と政子役で共演しているのは、いまから振り返ってみると興味深い。この頃に知り合ったのだろうか……。
監督が好きなテーマということもあり、自転車レースの躍動感がよく描写されていて掘り出しものだった。オススメです。