退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017) / ブラック企業からの逃避劇だがこれでいいのか?

DVDで映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017年、監督: 成島出)を鑑賞。原作は北川恵海の同名小説、主演は福士蒼汰

ブラック企業の営業職として働く青山隆(工藤阿須加)は、きびしいノルマに苛まれ心身共に疲弊していた。無意識に線路に飛び込もうとした彼は、幼なじみだというヤマモト(福士蒼汰)に助けられる。大阪弁を使いいつも爽やかなヤマモトと出会って以来、青山は持ち前の明るさを取り戻し営業成績も上がっていくが、顧客との間でトラブルが発生して……。


「ちょっと今から仕事やめてくる」予告

映画は世相を反映するものだが、植木等の時代は「お気楽なサラリーマン」が一世を風靡したが、いまは「ブラック企業」が取り上げられる時代になった。この映画に登場するのはステレオタイプブラック企業で、吉田鋼太郎が演じる上司はマンガ的にさえ思える。これにリアリティを感じるという人は職場環境が相当やばいのではないか。

ネイティブではないのに大阪弁を駆使した福士蒼汰の芝居はちょっといい。いままで過小評価していたかもしれない。相手役の工藤阿須加も健闘していて、二人の芝居がいいのはこの映画の美点。また森口瑤子が美しく撮れているのも個人的には高ポイント。

ただし脚本にやや難がある。後半はヤマモトの正体を説明することに汲々としていて面白みに欠ける。小池栄子まで投入しているのに、ちょっともったいない。

ストーリーで納得できないのは、「結局、会社辞めて海外に現実逃避かよ」と共感できないラストである。バヌアツが夢の楽園のように描かれていて、本当にこれでいいのだろうか。もっと現実に向き合わないといけないのではないか。無理に社会派映画にしなくてもよいが、せめて勤務していたブラック企業に一矢報いるラストがほしい。吉田鋼太郎が「ぎゃふん」という画が見たかった。