退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『パラサイト 半地下の家族』(2019) / 韓国映画初のパルム・ドールの受賞作

DVDで映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年、監督:ポン・ジュノ)を鑑賞。カンヌ・パルムドール、アカデミー作品・監督賞を受賞した韓国映画。韓国社会の明確な階級間の断絶を描いたブラック・コメディ。

Wi-Fi電波もろくに届かぬ半地下のアパートの一室で暮らす貧困一家。その長男は、友人から豪邸に住むIT会社社長の娘に英語を教える家庭教師の口を紹介される。有名大学の学生と偽って入り込んだ長男は、社長夫人に気に入られると、次に美大を落ちた妹をアメリカに留学経験があると偽り、社長の息子の美術教師に推薦する。社長一家に取り入った二人は、やがて父と母も社長一家にもぐり込ませる成功するが……。


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貧困一家が次々に社長宅に取り入っていくまでは、軽妙なコメディかと思って楽しく見ていたが、社長宅の地下に住んでいる男が登場するあたりから映画の雰囲気が一転する。

ちょっと想像もできない展開から、すさまじい結末に至る流れは、韓国映画の勢いを感じさせる。停滞している日本映画では撮れない作品で、韓国映画のほうが随分と先に行っていると思わせる。ブラック・コメディとかんたんに片付けられないジャンル不明の映画でもある。

外国映画を見るときは、社会や文化のちがいを考えなければいけないが、本作は格差社会を背景して、韓国でも格差が問題になっていることを想像できる。パルムドール受賞など欧米でも通用するということは、国を問わず現代社会に共通の社会問題なのだろう。

この映画はネタバレ厳禁。まずは白紙の状態で見るのがよい。なのでネタバレについては触れないが、一家がパラサイトするまでの過程が秀逸なのに対し、その後はちょっと失速している気もする。それでラストに至るまでのインパクトはすごい。一度は見ておく価値のある映画。

パラサイト 半地下の家族(字幕版)