退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『万引き家族』(2018) / 疑似家族の崩壊を描くドキュメンタリー風の映画

Amazonプライム・ビデオで映画『万引き家族』(2018年、監督:是枝裕和)を鑑賞。2018年カンヌ映画祭パルムドール受賞作。本当は名画座で見たかった作品だったけど、このご時世なので不本意ながらネットで視聴。

都会の片隅の一軒家で暮らす5人家族(樹木希林リリー・フランキー安藤サクラ松岡茉優、城桧吏)は、おばあさんの年金頼みの貧困生活だったが、足りない分は「万引き」して賄っていた。ある日、団地の廊下でネグレクトされていた幼い女児(佐々木みゆ)を連れて帰ってきて、そのまま家で暮らすようになる。6人になった家族は日常を重ねていくが、ある事件をきっかけにこの血のつながらない家族は崩壊していく……。


【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告

『誰も知らない』(2004年)と同じような雰囲気を感じた。社会の片隅で人知れず苦しんでいる貧困者にフォーカスするのは監督の一貫したテーマなのだろうか。一見ドキュメンタリー風でもある。こうした映画が海外で評価されるのはわかるような気がした。

冒頭の万引きにシーンから、疑似家族の日常を淡々を描いていくなか、家族それぞれの境遇や人間関係が浮き彫りになっていくあたりは手慣れている。静かに進行していくな思ったが、リリー・フランキーが工事現場でケガしたり、安藤サクラがクリーニング工場を解雇されたりして歯車が狂ってくる。そして樹木希林が扮するおばあさんの死をきっかけに、一気に疑似家族が崩壊してく急展開は緊張感があった。

この救いようのない話をどう終息させるのかと思っているが、そのまま観客に丸投げして映画が唐突に終わる。まあ先進国と言われる日本でも現実はそういうものかもしれないが、映画的なオチがなく、どうも釈然としない感情が残る。すっきりしないのだ。

出演者のなかでは安藤サクラがよい。演技も素晴らしかったが、素麺を食べながらのリリー・フランキーとの濡れ場は秀逸。あの肉体感は必見。全編通していちばん映画らしいシーンかもしれない。個人的には風俗で働く松岡茉優を楽しみにしていたのだが、安藤サクラの前では脇に置かれてしまいやや残念。おっぱいはよかったが……。

万引き家族」というタイトルだが、映画の一面を捉えているだけに過ぎない。でもキャッチーで興行的には上手いコピーライティングだと思った。

万引き家族