退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『そこのみにて光輝く』(2014) / 池脇千鶴の汚れ役が素晴らしい

目黒シネマで『そこのみにて光輝く』(2014年、呉美保監督)を鑑賞。佐藤泰志の同名小説の映画化。

舞台は函館。工事現場での事故をきっかけに毎日を無為に過ごす佐藤達夫綾野剛)は、ある日、ふとしたことからパチンコ屋で粗野だが人懐っこい青年・大城拓児(菅田将暉)と知り合う。達夫は拓児に誘われるまま彼の家まで行き、そこで拓児の姉・千夏(池脇千鶴)に出会う。千夏に惹かれてい達夫は、過去に決別して徐々に自分を取り戻していくが……。

そこのみにて光輝く 通常版DVD

そこのみにて光輝く 通常版DVD

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: DVD

暗く救いようのない話であり、70年代のATG映画を思い起こすような映画である。現代風のテイストが盛り込まれているが、どうしてもデジャブ感は拭えない。貧困や格差社会、そして純愛といった要素をぐつぐつに煮込むと、どの時代でも本作のような映画ができるのだろう。まあ決して嫌いではないが、見る人を選ぶかもしれない。

キャストは主演が綾野剛、助演が池脇千鶴菅田将暉。三人とも好演しているが、なんといっても池脇千鶴の演技が光っている。貧困のどん底にある家庭の娘で、水産工場で働く傍ら家族のために体を売り、地元の有力者と愛人関係にあるという汚れ役。役作りなのか、地なのかわからないが、これまでのイメージと違いぽちゃりと太っていたのに驚いた。この体型からにじみ出る貧乏くさい感じがとてもよい。

ストーリーは紆余曲折のあと破滅的な結末を迎えるが、ラストに二人を照らす光が素晴らしい。まさにタイトルどおり。これからどうなるのだろう余韻を残したエンディングも好印象だ。

映画『そこのみにて光輝く』予告編 - YouTube

今回、併映は北海道つながりということか『私の男』(2014年)だった。絵作りが似ていると思って、調べてみると、どちらの作品も撮影を近藤龍人が担当していた。彼の今後の作品も注目したい。
f:id:goldensnail:20150126195100j:plain