目黒シネマで『そこのみにて光輝く』(2014年、呉美保監督)を鑑賞。佐藤泰志の同名小説の映画化。
舞台は函館。工事現場での事故をきっかけに毎日を無為に過ごす佐藤達夫(綾野剛)は、ある日、ふとしたことからパチンコ屋で粗野だが人懐っこい青年・大城拓児(菅田将暉)と知り合う。達夫は拓児に誘われるまま彼の家まで行き、そこで拓児の姉・千夏(池脇千鶴)に出会う。千夏に惹かれてい達夫は、過去に決別して徐々に自分を取り戻していくが……。
暗く救いようのない話であり、70年代のATG映画を思い起こすような映画である。現代風のテイストが盛り込まれているが、どうしてもデジャブ感は拭えない。貧困や格差社会、そして純愛といった要素をぐつぐつに煮込むと、どの時代でも本作のような映画ができるのだろう。まあ決して嫌いではないが、見る人を選ぶかもしれない。
キャストは主演が綾野剛、助演が池脇千鶴、菅田将暉。三人とも好演しているが、なんといっても池脇千鶴の演技が光っている。貧困のどん底にある家庭の娘で、水産工場で働く傍ら家族のために体を売り、地元の有力者と愛人関係にあるという汚れ役。役作りなのか、地なのかわからないが、これまでのイメージと違いぽちゃりと太っていたのに驚いた。この体型からにじみ出る貧乏くさい感じがとてもよい。
ストーリーは紆余曲折のあと破滅的な結末を迎えるが、ラストに二人を照らす光が素晴らしい。まさにタイトルどおり。これからどうなるのだろう余韻を残したエンディングも好印象だ。
映画『そこのみにて光輝く』予告編 - YouTube
今回、併映は北海道つながりということか『私の男』(2014年)だった。絵作りが似ていると思って、調べてみると、どちらの作品も撮影を近藤龍人が担当していた。彼の今後の作品も注目したい。