退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】山井教雄 『まんが パレスチナ問題』(講談社現代新書、2005年)

もっとも解決困難な国際問題だと言われる「パレスチナ問題」が、最近注目を集めている。

ニュースは連日、イスラエル軍ガザ地区侵攻を報じ、同時にパレスチナ避難民の過酷な状況をこれでもかと流し続けている。なぜイスラエルはここまでできるのか、なぜアラブとイスラエルは争うのかと疑問を持つ人も多いだろう。

私も高校の世界史で断片的にはいろいろ覚えさせられた。古代のイスラエル王国にはじまり、ディアスポラポグロムホロコーストなどユダヤ人の苦難の歴史、そして英国の「三枚舌外交」に翻弄される中東地域、そしてついに「約束の地」にイスラエル建国、いくたびの中東戦争やその余波によるオイルショックなどなど……。本書は、こうしたバラバラの知識を整理するのに役立つ。

もちろん新書一冊ですべてがわかるはずもないが、ユダヤの少年ニッシムとパレスチナの少年アリ、そしてエルサレムの猫が、パレスチナ問題をガイドするという工夫により、とても読みやすい本に仕上がっている。

巻末近くで二人の少年ニッシムとアリの出自が明かされて楽観的な雰囲気でガイドは終わる。正直いうと「パレスチナ問題は解決不可能」だと確信した。とくにイスラエルがすでに核武装していることが決定的だろう。イスラエルは、いよいよ「約束の地」を失い、再びディアスポラの憂き目を見るおそれがあれば、核攻撃をためらわないだろう。昨今のガザ地区の情勢を見て、読後にそんなことを思った。

なおタイトルには「まんが」とあるが、日本の漫画とはちがいコマ割りや吹き出しがあるわけではない。イラストはあるが、フツーの本と同じように文字を追っていくことになる。

本書は古代からアラファトの死去あたりまでを扱っている。少し古い本だが入門書としてオススメできる。巻末に索引と略年表があるのもよい。続編も読んでみたい。