退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『空海』(1984) / 弘法大師空海入定1150年を記念してつくられた伝記大作

YouTube東映シアターオンライン」チャンネルで配信されていた、映画『空海』(1984年、監督;佐藤純彌)を鑑賞。弘法大師空海入定1150年を記念した伝記映画。真言宗の布教活動の一環として東映と提携して製作された。公開前から興行的な成功が約束されていたという。主演は北大路欣也

学問を修めて官吏として栄達することを目指し上京した佐伯真魚北大路欣也)は、いつの間にか大学を辞めて、修行と称し諸国を旅していた。やがて彼は空海と名を改め、仏教を究めるため遣唐使の留学僧となり唐に向かうが……。


www.youtube.com

弘法大師空海の生涯を、貴族たちの権力抗争や開放前の中国ロケを交えて描く伝記大作。真言宗がバックについているだけあって予算は潤沢だったのだろう。キャストも映像もカネがかかっている。遣唐船のシーンだけでも大したものだ。

当時、CGがない時代に噴火や嵐などの自然現象がうまく映像化されているのはすばらしい。空海の妄想シーンの映像化もちょっと面白いが、登場する女たちは半裸ぐらいになってほしかった……。

出演者のなかでは、主演の北大路欣也の渾身の演技がすばらしい。個人的な空海はもっと柔らかいイメージだっだった、本作では力強い空海として描かれていた。真言宗の信者による空海像が垣間見える点は興味深い。

ちなみに最澄加藤剛が演じているが、二人ともイケメンで面白くない。また劇中で「薬子の変」が起こるが、薬子を演じた小川真由美が実に素晴らしい。もっと出番があればと残念だったが、空海の映画なのだから仕方ない。あと桓武天皇役の丹波哲郎は、相変わらずの丹波芝居だった。何を演じても丹波丹波なのだ。

本作は当初、増村保造監督で企画されていたという。大映映画時代の増村作品のファンとしては、増村版で見たかった。そうは言っても、大作監督として定評のある佐藤純彌の職人仕事は見事であり、さすがと思わされる。

また映画とは直接関係ないが、YouTube配信が480pと低画質で残念だった。せっかくの大作なのだから、せめてHDで見たかった。音量も小さい。もう少し画質・音質に気を配ってほしい。