退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「沈黙の艦隊」を読了しました

かわぐちかいじ原作のコミック「沈黙の艦隊」が、大沢たかお主演で実写映画化され現在公開中です。そこで映画館に行く前に予習しなければ、ということで原作漫画を読み始めました。全32巻。予想以上に長かった。

この漫画は1988年から1996年にかけて漫画雑誌『モーニング』で連載されました。もう30年以上前の作品です。連載開始にはソ連時代であり、連載中にソ連が崩壊します。その間にベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が終結するという時代背景を持つ漫画です。このあたりの出来事は、いまでは歴史の教科書の1ページにすら思えます。

ストーリーは、日米の協力で秘密裏に建造された最新の原子力潜水艦「シーバット」に乗り組んだ海江田艦長以下が、計画的な反乱を起こし、独立国家「やまと」を宣言し、全世界を敵にまわすという荒唐無稽な物語。原潜「やまと」が米軍を次々に撃破していくのは痛快です。

この漫画では、原潜による戦闘シーンと、日本国内や国際舞台における政治劇が同時に進行しますが、政治劇のパートはセリフも多く、内容も難しいので読むのに時間がかかりました。正直、「国際政治はこんなに簡単じゃないだろ」と思わなくありませんが、漫画なので野暮なことは言わないのがよいでしょう。

終盤では海江田艦長がニューヨークの国連本部に乗り込み世界に向けて演説しますが、演台で狙撃されて……。まあ結末は伏せておきましょう。

また、これほど女性キャラクターが登場しない漫画もめずらしいと思いながら読んでいましたが、最後に海江田艦長の妻らしき女性が登場して、なんとなくホッとするエンディングでした。

非難を恐れずに言えば、日本は原潜を保有して核武装するしか生き残る術はないのではないか、というのが読後の感想です。本作でも「やまと」が核兵器を搭載している可能性があるというだけで、圧倒的優位に立つ場面があります。ウクライナ戦争を見ても、国際社会がロシアに直接手出しできないのも「核抑止力」のおかげです。日本もこれに倣うべきでしょう。

さて、きな臭い話は別にして、本作はエンターテイメントとして十分に面白く読めました。こうした骨太な漫画が、30年前に成立していたことに驚くばかりです。時間があるときに全巻の通読に挑戦してください。強くオススメします。