退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

雑誌「文藝春秋」で原田諒による手記〈宝塚「性加害」の真相〉読んで思ったこと

先日、ふと目にした少し前の雑誌「文藝春秋」(2023年6月号)に載っていた〈宝塚「性加害」の真相〉を読んでみた。昨年12月「性加害に及んだ演出家」と報道された、元・宝塚歌劇団の演出家である原田諒による反論ともいうべき手記である。

昨年、原田諒が被弾した「文春砲」の記事を目にしたときの第一感は、「ついに演出家が生徒に手をだしたかオワタ」と思ったが、それは完全に私の勘違いだったことにすぐに気づいた。この手記によれば、宝塚歌劇団出身の大物女優・真矢ミキの紹介で知り合った男性Aとのトラブルである。Aはやがて宝塚歌劇団に演出助手として入職することになる。その後、ふたりの関係は悪化してA側は「文春砲」を使って半ば脅すように、劇団に対し原田の退職を迫る事態に至る。手記を読んでも原田との間に実際に何があったのわからないが……。

まず思ったのは、原田の脇の甘さである。原田はAと長い間にわたり行動をともにしていたことは間違いないようだ。それにもかかわらずAの本質を見抜けなかったのが致命的。Aと付き合うことがリスクが高いことに早い段階に気づければ、こうした事態は回避できた可能性は高い。

次に宝塚歌劇団の対応もひどい。こうした事態になったら、まずは仲間である原田を守るだろうと思うが、実際はこれに反して「文春砲」を恐れるばかりに事件を隠蔽しようと図り、原田に自主退職を迫るというポンコツぶり。まさに「事なかれ主義」の旧態依然たる日本企業の宿痾を見た思いだ。しかし結果として「文春砲」に被弾したうえに、劇団は『ピガール狂騒曲』などの実績にある演出家を失ってしまうという救いようのない顛末となる。大失策である。だいたい演出家を養成するのに何年かかると思っているのか。

さらに文藝春秋社も不思議な組織だなと思った。原田や劇団に「文春砲」を放ってスキャンダルを煽っておいて、自社の別メディアでは原田が反論する機会を与え手記を載せている。これでバランスをとっているつもりなのか。ヅカネタは金になるということなのかしらんと訝しく思う。

結局、原田は従業員の地位確認を求めて劇団を提訴し裁判沙汰となっている。泥仕合である。どこに落ち着くのかわからないが、こういうスキャンダルは見たくないものだ。宝塚歌劇は夢の世界であってほしい。