退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

新文芸坐で東宝版『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(1962年)を観る

《12月14日は四十七士討ち入りの日!》ということで、本当にひさしぶりに新文芸坐に出向いて、東宝版『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(1962年、監督:稲垣浩)を鑑賞する。1本立て。途中休憩あり。

東宝創立30周年記念映画の1本で、東宝オールキャストで描いた忠臣蔵映画。大石内蔵助役は八代目松本幸四郎で、私の世代としては「鬼平のパパ」であるが、当たり前だがふたりはよく似ている。

東宝オールスターなのに三船敏郎が大石でなければ、何なんだと思うだろうが、三船は俵星玄蕃役で浪士ではないが堀部安兵衛三橋達也)を友誼を結び、志士たちを陰ながら支援するという役回り。また配役のなかでは、原節子が大石妻りく役で出演していることに注目したい。彼女の最後の映画出演作となった。

戦後、GHQにより「忠臣蔵」は禁止されたが、それが解禁されて各社忠臣蔵を取り出す。大映東映と来てようやく東宝である。オールスターということもあり、オーソドックスな忠臣蔵である。

八代目松本幸四郎の大石は貫禄があるばかりでなく、京で色街で遊び呆ける姿が堂に入っているのがさすがというべきか。この味はなかなか出せないではないのではないか。

劇中、ところどころギャグが挿入されているのは東宝らしいとも言えるが、芝居全体が軽くなってしまっている。また東宝らしいと言えば、伊福部昭により、討ち入りの場面ではゴジラ東宝特撮かと思う劇伴が用いられているのは面白い。

やはり難点に思えるのは女優陣が弱いところだろうか。あまり時代劇に慣れてないのかなと思わされるのは残念。この点においては大映版が格段に優れている。

ちなみに昨年の〈討ち入りの日〉には「大映版」が上映された。今年は東宝版とうことで、来年は東映版(いくつもあるけど)かなと期待させる。