退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

里見浩太朗主演の年末時代劇スペシャル「忠臣蔵」が濃かった

年末年始に録画した番組を消化中。そのなかの時代劇スペシャル「忠臣蔵」を鑑賞。1985年の年末に放送された日本テレビ年末時代劇スペシャルの第1作。前篇「君、怒りもて 往生を遂ぐ」、後篇「我、一死もて 大義に生く」の二部構成。

キャストは大石内蔵助里見浩太朗が主演しているほか、吉良上野介森繁久彌が、浅野内匠頭風間杜夫が演じている。豪華なテレビ時代劇である。

総じてオーソドックスな「忠臣蔵」であるが、大石が松の廊下で刃傷に及んでお家断絶された主君・浅野内匠頭の火事装束を前に「軽率すぎた」と諌めるなど、忠義のこころをむやみに押し出すことなく、冷静で客観的な視点で仇討ちに取り組む大石の人物像がよく描かれる。

f:id:goldensnail:20190104062601j:plain:w400

また芸達者の森繁久彌であれば、もっとアクの強い慇懃無礼な吉良も演じられたであろうが、いたってシリアスな人物描写である。吉良が討たれる場面でも、これまでの「忠臣蔵」では往生際の悪い吉良が多いのに対し、本作では最期に能を舞いながら潔く討たれていて、高家筆頭としての貫禄を見せている。

f:id:goldensnail:20190104062549j:plainf:id:goldensnail:20190104062553j:plain

余談だがアイドル枠で桂木文が出ているのも見逃せない。懐かしい。吉良屋敷の図面をひいた大工の棟梁の娘である。浪士・岡野金右衛門堤大二郎)と恋仲になり、図面を持ち出すという役どころ。大映映画『忠臣蔵』では若尾文子が演じた役である。

f:id:goldensnail:20190104062557j:plain:w400

テレビ時代劇としては豪華キャストの作品で登場人物を追っていくだけで楽しめる。また、お茶の間で見ることを考慮してだろうが、とてもわかりやすくつくれているのも特徴的である。民放で大型時代劇が撮られなくなって久しいが、たまにはこうした作品を見るのもなかなかいいものである。