退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

三船敏郎主演、テレビ時代劇『大忠臣蔵』 (1971年)を1年間堪能しました

テレ玉で再放送されていた『大忠臣蔵』が最終回を迎えました。このテレビドラマは、三船プロダクションで企画製作され、1971年にNETテレビで放送されました。

民放で大河ドラマに対抗したかったと言われていますが、ちょうど日本映画の斜陽期と重なったため、従来映画会社が囲い込んでいた俳優たちが数多く出演しており、さらに当時活躍していた芸人やタレントを含めて豪華なキャストになっています。空前のスケールで実現した奇跡の民放時代劇ドラマといえるでしょう。

もちろん主役・大石内蔵助三船敏郎が演じています。忠臣蔵は何度も映像化されていて、なかには大石内蔵助を昼行灯として描く作品もありますが、本作の内蔵助は豪の者そのもの。得意の殺陣も随所で見せてくれていますが、京で遊蕩三昧の日々と過ごしていいてもすきがありません。

珍しいことに、吉良上野介の演者が交代していることも特筆できます。八代目市川中車が急逝してことにより、以後、実弟の二代目市川小太夫を代役を務めています。第47回の番組冒頭に市川小太夫が事情を説明する口上が行っています。話には聞いていましたが今回初めて実際に見ました。大変珍しいアクシデントです。

また長丁場なのでいろいろ潤色もされていますが、目立つのは柳生一門の女剣士・お蘭(上月晃)です。立ち回りでテンポがダウンするのは仕方ありませが、千坂兵部(丹波哲郎)を慕う女心の切なさがよく表現されています。宝塚歌劇団出身の上月晃の若い頃の勇姿を拝見できる貴重な作品でもあります。

そして音楽は冨田勲が担当しており、オープニングは荘厳な楽曲が奢られています。一方シナリオは従来の解釈からとくに新規性があるわけもなく凡庸なものになっています。音楽が素晴らしいだけにちょっと残念な気もします。

全編通してキャスティングと俳優たちの演技を楽しむ時代劇と言えるでしょう。約1年間堪能しました。独立局も侮れませんね。


大忠臣蔵/テーマ音楽