退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『つつんで、ひらいて』(2020) / 装丁者・菊地信義を追ったドキュメンタリー映画

DVDでドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』(2020年、監督:広瀬奈々子 )を鑑賞。

これほど書店に本が溢れていのだから、本のデザイナーという職業があるのはまちがいないだろうが、どうも具体的なイメージが湧かない職業のひとつである。本作では、40年以上にわたり日本のブックデザイン界をリードしてきた稀代の装幀家菊地信義を取り上げ、創作の秘密を探っていく。


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菊地がこれまでに手掛けた本がドキュメンタリーのなかで紹介される。数々のベストセラーも並んでいて、何冊も読んだことあるという人も多いだろう。

菊地の創作風景は実にアナログで、手作業で1冊ずつデザインしていく。それを30年もいっしょに仕事をしてきたという女性がパソコンを使ってデジタルデータに変換していく様子は、阿吽の呼吸というか二人の息のあっていて、その仕事ぶりは興味深い。

電子書籍が普及していくなか、リアルな紙の本は生き残ることができるのだろうか。映画のなかで古井由吉も同じようなことを述べていた。まあ、あまり将来性のある仕事ではないだろう。

このドキュメンタリーを見ているかぎり、弟子とおぼしく人もいないようなので、氏の装丁のノウハウも属人的なものとして、やがて消えていく運命なのか。また装丁者は、職人なのかそれとも芸術家なのか、そんなことも考えさせてくれる。