DVDで映画『みをつくし料理帖』(2020年、監督:角川春樹)を鑑賞。原作は髙田郁による時代小説。主演は松本穂香。
大坂に生まれた少女・澪(みお)は天災で両親を失い天涯孤独になるが、偶然出会った料理屋「天満一兆庵」の女将・芳(若村麻由美)に助けられ、江戸で料理の腕だけを頼りに生きていくことになる。澪(松本穂香)が、さまざまな苦労しながらも一流の女料理人として成長していく物語。
「角川映画の集大成」というふれこみと、テレビドラマ版「みをつくし料理帖」がよかったので期待して見始める。丁寧につくられたとても良い映画だった。澪(松本穂香)と野江(奈緒)の友情がよく描かれていて感動できる。とくに主演の松本穂香の熱演が素晴らしい。
それでも長編時代小説を一本の映画にするという企画に無理があるように思う。この映画の不運なのは、NHKが黒木華主演でテレビドラマ化したあとで公開されたことだろう。尺のあるテレビドラマにより、原作が多面的に映像化された後では、この映画はどうしても物足りなく感じてしまう。
この物語には、澪と野江の友情のほかに、澪が創作する料理の魅力や澪の恋の行方など何本か柱がある。それらが並行して進行していくところに醍醐味がある。尺の関係で幼馴染ふたりの友誼にフォーカスしたのは仕方ないのだろうが食い足りない気はした。
配役については、石坂浩二が澪が働く料理屋の主人・種市を演じているなど、澪の脇をベテランが固めていて見ごたえのある芝居だった。一方、藤井隆の演技は過剰で違和感があった。コメディリリーフでワンシーンだけ起用されたのかと思ったが、最後までストーリーに絡む重要な役だったので驚いた。あれはないだろう。