退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『薔薇の葬列』(1969) / 松本俊夫監督の劇場用長編第1作

早稲田松竹の《早稲田松竹ラシックスvol.159 寺山修司×松本俊夫》で映画『薔薇の葬列』(1969年、脚本・監督:松本俊夫)を鑑賞。松本俊夫監督の劇場用長編第1作であり、ピーター(池畑慎之介)の映画デビュー作でもある。

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新宿のゲイバーのナンバーワンであるエディ(ピーター)は、経営者の権田(土屋嘉男)と深い関係にあった。それを知ったゲイバーのママ、レダ(小笠原修)は嫉妬して、エディを殺害しようととするが失敗。まんまと店を手に入れたエディは、ふとしたことから自分に出自を知ることになる……。


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ATG配給ということもあり興行を考慮せずに自由に撮っていて「前衛的」である。時代は何周かしているが、いま見てもカッコいい。ギリシャ神話「オイディプス」を下敷きにしてるあたりは、インテリ監督の作品だなと思わせる。それでいて映像作家らしいユーモアが散りばめられていて「喜劇」としても見れるという絶妙なバランス感覚がすばらしい。

猥雑なエネルギーに満ちていた60年代末期の新宿を舞台しているのも興味深い。さすがに当時の新宿をリアルタイムに経験していていないが、ところどころ知っている80年代以降の新宿と重ねて見ることができる。

出演者は主演のピーターの存在感もすばらしいが、東宝から土屋嘉男が出演しているのも見逃せない。加えてエディの母親役は、テレビドラマ「白い巨塔」で東教授夫人を演じる東恵美子だったことに今回初めて気づいた。さらに当時の文化人も多数出演していて、劇中に淀川長治が登場するあたりは劇場内に笑いが漏れた。

ひさしぶりに見たが、松本俊夫監督が天才だったと再確認できる作品。

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