昨年12月、アフガニスタン東部で何者かに銃撃されて死去した医師の中村哲氏の著書。年末年始に読み直してみました。
この文庫本は1993年に刊行された単行本を、のちに文庫化したものである。80年代から90年代にかけてのアフガニスタンやパキスタンにおける国際協力や医療活動の体験談が生々しく紹介されている。やや時代を感じる内容もあるが、最初に読んだときの鮮烈な読後感は変わらない。
とくにハンセン病(著者はこう言い換えるのは嫌だったらしい)患者を治療するくだりは印象深い。貧困層の人たちの治療に献身的にあたる氏の姿は神々しくすらある。
また本の終盤における氏の哲学的とも思える言葉には、国際協力やボランティアとは何だろう考えさせられる。国際協力の美名のもとにワラワラと集まってきては、現地の情勢が変化するとすぐに撤退してしまう先進諸国の団体や、日本に帰国したときの日本人の冷たい反応などは、いまでも通用する内容だろう。
最近、『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』という本を読んだ。統計上は世界は少しずつであるが豊かになり、多くの国は貧困から脱しているらしい。アフガニスタンも、この本で紹介された時代からどの程度変わったのだろうか。そんなことを考えながら読了した。
ちなみに著者が最初に赴任したパキスタンのペシャワールの位置は下の地図のとおり。どんな場所なのかまったく想像できない。
この本にははっきりとは書かれていないだろうが、そもそも著者はなぜ国際医療活動に惹かれたのだろう。何が彼を突き動かしていたのか。そんなことを思いながら読み終わった。