新文芸坐の《シネマ・カーテンコール 2018》で映画『ウィンド・リバー』(2017年、監督: テイラー・シェリダン)を鑑賞する。
- 発売日: 2018/12/04
- メディア: Blu-ray
ワイオミング州にあるアメリカ先住民の保留地ウィンド・リバーに暮らすベテランハンターのコリー(ジェレミー・レナー)は、任務中に雪原で先住民少女の死体を発見する。部族警察から連絡を受けたFBIは女性捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)をただひとり派遣する。慣れない土地での捜査にジェーンはコリーに協力を依頼するが……。
開拓時代に先住民を押し込めた保留地(reservation)はアメリカ史の闇である。現代でも先住民は貧困に苦しんでいるばかりでなく、保留地には警察権力が十分に及ばず無法地帯である。本作の冒頭には「実際の出来事に触発された」のようなテロップがあった。保留地の治安悪化は社会問題となっているがまったく解決されていない。
保留地はワイオミング州にあるが、連邦政府の直轄地で弱小の部族警察の手に余るとFBIの出番となる。地元警察は広大な保留地に対して、わずか6人しかいない。ちなみに舞台のウィンド・リバーの位置は下のとおり。高山地帯である。
この映画は社会派作品の側面もあるが、娯楽映画としても文句なしに面白い。雪山のロケ映像が素晴らしいところは特筆できる。大きなスクリーンで見る価値がある。
本作は現代劇ではあるが、法の支配が及ばない「ヒャッハー」の時代だった西部劇をを思わせる。さしずめ雪中を疾走するスノーモービルはまるで馬だろうか。最後はならず者たちと派手な銃撃戦となり、主人公は犯人に非情な制裁を加えるのも西部劇らしい。
ただし遠い昔を舞台にした勧善懲悪の西部劇のように手放しで喝采できないのは、虐げれている先住民たちがいまもいるという事実ゆえだろう。現実の社会問題とリンクしている点はいろいろ考えさせられる。
これが今年映画館で見た最後の作品だったが、文句なしにアタリだった。「終わりよければすべてよし」というところである。オススメです。