退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『大怪獣のあとしまつ』(2022) / 三木聡監督による迷作

近くのシネコンで映画『大怪獣のあとしまつ』(2022年、監督・脚本:三木聡)を鑑賞。「この死体どうする?」というコピーが踊る、怪獣の死骸の処理を引き受けることになった者たちの姿を描く不思議な映画。主演は山田涼介。

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人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、ある日突然死んだ。政府は怪獣の死体に「希望」と名付ける。河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗により膨張が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明する。首相や大臣らは「大怪獣の死体処理」という前代未聞の難問を前に右往左往するばかり。死体処理という極秘ミッションを任されたのは、首相直轄組織・特務隊隊員・帯刀アラタ(山田涼介)であった……。


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予告編を見て楽しみにしていた映画だったが公開後、酷評がネットに溢れた。これを見て「見送ったほうがいいかな」と思った。しかし、これまでも公開後すぐに打ち切られても再評価された映画も多い。これは勇気をもって見に行くしかないと思い直して見てきた。

結論は「ネットで酷評されているほど悪くはないが一般人にはオススメできない」。おそらく見た人は三木聡作品だということを忘れているのだろう。わたしは嫌いではない。

三木聡作品となればシリアスは特撮映画でないことはすぐにわかる。たしかにギャグはさむいし、ネタも「昭和かな」と思うようなシーンが多数ある、下ネタもひどい。しかし、これが三木聡監督なのだ。かつてはもっと演出が冴えていて好きな監督だったのが、最近はちょっと冴えないかも……。

まあ三木聡監督にしても制約が多くて不本意だったのかもしれない。錚々たる豪華な出演陣に三木聡のセンスを敷衍して演技してもらうのは無理だったろう。三木聡チームでこじんまりつくれたら、もっとキレのある演出になったろう。

脚本も「ん?」と首をひねることが多い。例えば、首相のデスクで「デウス・エクス・マキナ」と書いたメモが出てくる時点でネタバレじゃないかと思ったが、案の定ラストは……。また恋愛や不倫の場面があり、その後ストーリーで回収されるかと思ったがとくに何もなかった。これでいいのかしらん。

さらにヒロインの土屋太鳳がキノコの下ネタに思いっきり絡んできたのにも驚いた。「太鳳ちゃんは仕事を選んだほうがいいんじゃないかなぁ」と心のなかでつぶやいた。こんな映画と心中してもなぁ……。

それでもSFXは低予算だがなかなかがんばっていて、怪獣のテキスチャなどはなかなかよくできていた。特撮映像を大きなスクリーンで見れたのはよかった。「ひょっとして回想シーンで、怪獣が暴れるシーンがあるかな」と期待したが、それはなかった。ずっと死んだまま。残念。

後にこの映画がどのように評価されるのかわからないが、いまのところ「令和の『デビルマン』」と揶揄される始末。松竹と東映による初の共同製作作品だったのに、締まらない話である。
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