退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『サイドカーに犬』(2007) / 竹内結子主演の佳作。追悼の気持ちで見直してみた

DVDで映画『サイドカーに犬』(2007年、監督:根岸吉太郎)を鑑賞する。先日亡くなった竹内結子の主演作。彼女の転機となった映画でもある。あまり有名とは言えない作品だが私が好きな映画のひとつ。原作は長嶋有の短篇小説。

サイドカーに犬 [DVD]

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  • 発売日: 2007/12/21
  • メディア: DVD

物語自体はどうということはない。不動産会社に務める薫(ミムラ)の思い出のなかに生きている憧れの女性・ヨーコ(竹内結子)を回想する話。父親(古田新太)に愛想を尽かした母親(鈴木砂羽)が家出する。その数日後、家に突然やってきたのは愛人のヨーコさん。少女時代の薫(松本花奈)に「オッス!」と挨拶する。食事をつくりに来ただけというヨーコさんは薫にとって別世界の住人であった……。


映画『サイドカーに犬』予告編

竹内が破天荒で勝気なヒロインをよく演じているが、いま見ると背伸びしていた印象もある。それでもスクリーンのなかの彼女は輝いていて存在感がある。後に女優として開花した才能の片鱗を見ることができる。ダメオヤジを演じた古田新太の上手さに支えられている面もあるだろう。

薫にとってはヨーコは母親以外の初めての「大人の女性」だったのだろうが、ヨーコと薫が年の離れた友人関係がよく描かれている。少女時代の薫を演じた松本花奈の好演も光る。松本が成長したらミムラになるというもどこか納得できるキャスティングもナイス。

薫の思い出だけでなく現代と過去との間にもっとつながりがあってもよかったとも思うが、ひねりもなくあっと言う間に映画が終わってしまう。過去を美化しない演出は好感がもてる。まあ薄味とも言えるが、こうしたコンパクトな作品も悪くない。