退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『元祖大四畳半大物語』(1980) / 松本零士原作のコミックを曽根中生が映画化

DVDで映画『元祖大四畳半大物語』(1980年)を鑑賞。松本零士原作の同名コミックの映画化。曽根中生松本零士の共同監督とクレジットされているが、松本先生がどの程度関与していたかは不明。いい意味に力の抜けた曽根中生監督による傑作青春ドラマ。まさかソフト化されているとは思わなかった。


九州から大志を抱いて上京した主人公・足立太(山口洋司)は本郷の第三下宿荘に下宿する。そこは八十近いジイさんとバアさんが管理していた。部屋は日当たりの悪いオンボロ四畳半。しかも家賃前払いでいきなり金欠になるは、務める予定の会社は倒産してるは前途多難。失意のうちに下宿に戻った太は、長身の美人ジュン(篠ひろ子)と同棲するヒモのヤクザ・ジュリー(前川清)に出会う。足立太の新生活は始まるが……。


2018年10月2日 松本零士&曽根中生『元祖大四畳半大物語』特典付で待望の新装DVDリリース!

本作はコミック原作の実写化で成功した数少ない映画のひとつ。低予算ながら原作の世界観を見事に再現している。このあたりは松本零士が貢献しているのかもしれない。とにかくコミックを実写化して成功した例は少ない。成功例として自身を持って挙げられるのは『ドカベン』(1977年)、『GANTZ』(2011年)、そして萬屋錦之介主演の「子連れ狼」シリーズあたりだろうか。原作ファンが納得できない作品になる場合が多い。

元祖大四畳半大物語 【コミックセット】

原作は松本零士が上京したときの苦労話がモチーフになっているというから、時代としては1950年代後半ということになるだろうか。松本自身は、その後大成して名を成すわけだが、この映画の主人公・太はこの時点では何者でもないし、どのような進路を目指すのかも見えていない。それでも「若さっていいな」と思わせるところかいい。

キャストでは、まず篠ひろ子素晴らしい。理知的な長身美人でどこか影のあるキャラクターは原作のキャラクターにピッタリ。当時30歳すぎぐらいで女盛りというところだろうか。また主人公を演じた山口洋司もなかなかいい。彼は一般オーディションで選ばれて、当時日大生だったいう。長身の篠との対比の絵が面白い。あと昨年亡くなった松本ちえこも出演していて懐かしかった。

この作品はにっかつ製作。青年誌に連載れていた原作にも性描写はあるので、曽根中生にっかつロマンポルノ作品を多数手がけたところから起用されたようだ。しかし本作は日活ロマンポルノではなく一般映画として公開されている。篠ひろ子も黒い下着姿を披露する程度の露出である。ロマンポルノとして実写化されたらどんな映画になったのか興味あるところである。