退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

惣領冬実によるコミック「チェーザレ 破壊の創造者」を読了する

惣領冬実による歴史漫画「チェーザレ 破壊の創造者」(全13巻)を読み終わった。『モーニング』(講談社)で、2005年から2021年まで不定期に連載されていた。第12巻がでるまでが長く待ちくたびれた記憶があるが、いつのまにか完結していたので最初から読み直してみた。

15世紀末のイタリアを舞台にした歴史漫画。実在の人物チェーザレ・ボルジア(1475-1507)を中心に架空の人物を交えて展開する群像劇。当時のイタリアの大学の教皇選挙(コンクラーベ)の様子が興味深く描かれている。ちょうどレコンキスタの頃の話である。

地味な表紙に加えて、各巻には時代背景の解説がたっぷり載っている。当時のイタリア事情に通じていないと、最初のハードルはなかなか高いかもしれない。全体として娯楽性に乏しく、史実に沿った内容になっている。このままだとアニメ化も難しいだろう。

精緻な絵柄に惹かれて最後まで読み通すことができた。正直、チェーザレが敗死するまでを描くのかと思っていたが、教皇選挙で勝利して「さあ、オレたちの時代だ」というあたりで漫画が終わっている。やや肩透かしを食らった思いだ。メディチ家についても、第一次イタリア戦争後、フィレンツェを追放されるあたりまで描いてほしかった。

いずれにせよ、情報量がやたらと多い歴史漫画なのでそれなりの覚悟を持って読み始める必要があるだろう。それだけに、読後の満足度は高い。