幸村誠によるコミック『プラネテス』(全4巻)を読み終わった。この作品は『モーニング』(講談社)に1999年から2004年まで不定期連載された。宇宙開発により生じたスペースデブリ(宇宙ごみ)問題を取り上げ、デブリの回収業者が主役のSF漫画。
この作品をいま読もうと思ったのは、今年になってEテレで谷口悟朗監督によるテレビアニメ『プラネテス』(全26話)の再放送を見たからだ。
コミック原作のアニメ化は難しいと言われる。コミックのファンは自分であらかじめ作品の世界観をつくってしまっているからだ。アニメ作品がこの世界観を満足させるのは至難の業というわけだ。
しかし、この『プラネテス』はコミック原作とテレビアニメが、ともに独自の雰囲気をもってファンに訴えてくる稀有な例である。コミック原作をそのままトレースしているわけはなく、緻密な計算のもとに原作を再構成しているところが素晴らしい。アニオリもあるし、逆に原作にあるがアニメ化されていないエピソードもある。キャラクターの性質もかなり改変している。
もちろんアニメなのだから、画が動いたり、SEや音楽がついたりするのは当たり前だが、それにとどまらずアニメ化のお手本といえる見事な仕事である。当時のサンライズの充実ぶりが伝わってくる。両者を対比させてみるのも面白いだろう。
テレビアニメでは木星往還船出発するところで終わっているが、原作コミックでは木星に到着する場面がちゃんと描かれている。テレビアニメでちょっといいなと思った人は、ぜひ原作を読んでほしい。寓話的なエピソードや骨太なエピソードが多い。読む人を選ぶかもしれないが、ぜひ原作を手にとってほしい。