退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『希望の乙女』(1958) / 美空ひばりの芸能生活10周年記念作品

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで映画『希望の乙女』(1958年、監督:佐々木康)を鑑賞。美空ひばりの芸能生活10周年記念作品。東映らしからぬオシャレなミュージカル映画。主演は美空ひばり。相手役として高倉健が出演している。

北海道の牧場で暮らす少女・美原さゆり(美空ひばり)の夢は歌手になること。その夢のため単身上京したさゆりは、作曲家の月村先生(山村聡)に弟子入りを頼むが、先生は失意の真っ只中。それでもさゆりは強引に住み込んで、先生の世話やアルバイトに精を出す。街のアマチュア楽団と仲良しになり、すっかり街の人気者になる。そしてプロの音楽家・丈二(高倉健)と再会して、二人の間に恋が芽生える……。

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無名の少女が大望を抱いて上京して成功するというのは、青春映画の定番ストーリーである。陳腐ではあるがそこはよしとしよう。しかし本作では美空ひばりが貫禄ありすぎて、そても無名の少女に思えないところは難点か。

言うまでもないが美空ひばりの歌は上手い。そんな彼女が全編歌いまくっている映画。英語の楽曲も耳コピで完璧に歌いこなしたという伝説の持ち主がジャズなどのナンバーもそつなく歌っていて、実力を遺憾なく発揮しており楽しめる。

相手役の高倉健はどこか居心地が悪そうだ。ひばりに音楽的に比肩できる相手役を配してデュエットぐらい披露してほしかった。なぜ高倉健だったのかよくわからない。ラブコメのパートもどこか板につかない。

ほかの出演者のなかでは、おじさん俳優として知られる山村聡がいい味を出している。主人公の成功を願いつつ、「老兵は死なずただ去りゆくのみ」さならがに自分は身を引くとところがいい。他にも、若きダークダックスの面々や、後に政治家に転ずる山東昭子の姿も見ることができて懐かしい。

今回はちっともエクストリームな作品ではだったが、「東映もこんなミュージカル映画作っていたんだな」と思うようなレアな映画を見れて満足。惜しむらくは音質がイマイチだったこと。当時の音源なので仕方ないのだが、ひばりの歌唱が素晴らしいだけに余計に惜しい。