順天堂大学医学部の不正入試問題をめぐり、元受験生の女性13人が大学に損害賠償を求めた裁判で、19日東京地裁は性別による不合理な差別があったとして大学に合わせて800万円余りの支払いを命じた。
記事によれば、原告1人当たり最大約1065万円の慰謝料などを求めたが、今回の判決では東京地裁は1人当たり30万~90万円の慰謝料を含む支払いを命じている。大学側は「私立大には高度の裁量権が認められるべきだ」と主張したが容れられなかった。
賠償料の多寡についてはわからないが、「そういえば医学部入試の男女差別あったね」と懐かく聞いていた。
まあ居所的には今回の地裁判決は合理的なのかもしれないが、俯瞰的に捉えると問題はそれほど簡単ではない。女性医師の割合が増えると、医師全体の稼働率は低くなるし、診療科の偏りも大きくなるだろう。これでは現場が回らない。
実際、「差別入試」騒動を契機に、女子医大生の割合が増えていると聞く。そうなると大学の医局が立ち行かなくなるだけでなく、ひいては医療現場の逼迫を招きとくに地方では医師不足が加速する。最終的に困るのは患者たちということになるのは明らかである。
また入試対策でも、この大学は多浪生に厳しいとか、この大学は女性はボーダーが高いという情報は共有されていて暗黙の了解だったはずだ。それを「入試要項に明記されていなかった」と今回だけ鬼の首を取ったように訴訟に持ち込むのもどうかと思う。
まあこうした男女差別をいつまでも放置していいとは思わないが、もろもろの環境が改善されぬままに、大学にだけ男女差別の解消を求めるのは無理というものだろう。そうまでした男女差別をしなければいけなかったのには、それなりの理由があるはずで、そのことに思いを巡らすべきだ。
本来ならば、この件はもっと広く議論が尽くされるべきだが、当時騒ぐだで騒いで、いまではすっかり忘れられている。困ったものである。