退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(1981) / デスラーの悲恋物語

DVDでアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(1981年)を鑑賞。リメイク版の「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」ではなく、昭和の「宇宙戦艦ヤマト」である。

宇宙戦艦ヤマトシリーズ」の第5作。シリーズ異色作。テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト2』の続編として制作され、テレビスペシャルとして1979年に放送された後、劇場用アニメーション映画として1981年に劇場公開されている。

白色彗星帝国との戦いを終えたデスラーは、残存艦隊を率いて新天地を探す旅に出る前に母星ガミラスに別れのために立ち寄る。そこでは暗黒星団帝国が地下物質ガミラシウムを無断で採掘していた。これに激怒したデスラーは攻撃を加えるが、その結果、ガミラス本星の崩壊を招き、連星を構成していたイスカンダル星は引力のバランスを崩して暴走を引き起こす……。

宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち HDリマスター版

本作はデスラーのスターシャへの叶わぬ恋を描く物語とも言えるが、いろいろ破綻していて見ているのがツラい作品になっている。当時は「男のロマン」と言えば、無理が通るご時世だったのかもしれないが、いま見るとさすがに陳腐に思えてしまう。

このアニメを見ていてまず不思議に感じるのは、なぜスターシャと古代守はすぐにイスカンダル星から脱出しないかということ。二人の娘・サーシャもいるのに退避しない理由がさっぱりわからん。

宇宙戦艦ヤマトシリーズ」のなかでも不出来なほうだろう。宇宙戦艦ヤマトにフレッシュな乗組員が配属され、それぞれに見せ場あるものの次作以降には登場しないのも腑に落ちない。続編を適当に作ってるなあ、と子どもながらに思ったものだ。振り返ればシリーズ化もこのあたりで限界に達していたのかもしれない。

ただしアニメとしての見どころはある。自動惑星ゴルバの意匠はカッコいいし、その主砲の開口部にデスラー艦が突っ込み、デスターが古代に「オレを撃て」というシーンも好きだ。まあこうした「男のロマン」がすっかり廃れてしまったのも時流であろう。

今回のDVDには未公開シーンの静止画が収録されていた。これは貴重。本編を見てどうも話の流れがスムースじゃないと思っていたが、カットされたシーンを見ると、安彦良和による絵コンテはちゃんとしていたことがわかる。

テレビスペシャルなので放送枠に入らない分はカットされたのだろうが、劇場公開するときに完全版を作れたははずだ。しかしそうならなかっのは残念というほかない。