退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

細田衆院議長が小選挙区「10増10減」に反対していて驚いた件

少し前、衆院議長を務める細田博之氏が「10増10減」に反対していると報道された。本来、中立であるべきはずの衆議院議長が公然と異を唱えているとは驚きだ。その後、セクハラ疑惑で文春砲をくらったことはひとまず措いておく。

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一票の格差」問題は選挙のたびに訴訟沙汰になっている。そのたびに「違憲状態」という謎の状態が繰り返し発生しており、違憲だが選挙結果が有効という不思議な判決が出ている。

この「一票の格差」を是正するため、衆議院小選挙区を「10増10減」で変更する区割り案が調整中である。この「10増10減」はあまり知られていないが法律に基づいている。2016年4月に衆参両院で成立された衆院選挙制度改革関連法である。アダムズ方式という議席配分方法を2022年以降の衆院選から採用するよう答申し、これを受けてこの法律が立案され成立している。

選挙のたびに「一票の格差」問題で裁判になるたびに、「いい加減、数学的ルールを決めて区割りやれよ」と思ったものだが、そうした仕組みは一応整っているようだ。それにもかかわらず、細田衆院議長がこれに反対するという異常事態。

そもそも国会議員が選挙制度に口を挟むのがおかしい。選挙制度には自分たちの命運が掛かっているのだから中立でいられるはずもなく、自分の損得勘定で動くのは明らかだからだ。「一票の格差」を最小化するルールを決めて、粛々と機械的に区割りを変更していけばよい。

細田衆院議長が反対する理由が気になるが、上の記事によれば選挙区事情であり、損得勘定そのものである。細田はこの区割りは「地方いじめ」と言ってたようだが、「国会議員は全国民の代表」だと憲法に定められている。決して地域代表ではないことすら、細田氏理解していないようだ。

個人的には、「一票の格差」が2倍に収まればよし、とする基準もよく理解できない。完全に格差をなくすことは、全国をひとつの選挙区にしない限り無理だろうが、もっと少し圧縮できるはずである。そうしたルールを導入することはできないのだろうか。

昔、アメリカ独立戦争の「代表なくして課税なし」というスローガンが掲げられた。日本でも「一票の格差」をそのまま税率に反映させたらいいのではないか。「一票の重み」が2倍あるなら、税率も2倍にしなくてはいけない。そのぐらいやれば「一票の重み」について、国民の関心も高まるだろう。

この「10増10減」は、政府の衆院議員選挙区画定審議会が今年6月25日までに区割り変更案を岸田首相に勧告し、政府はそれを反映した公職選挙法改正案を国会に提出する予定になっている。

これを岸田内閣がどのように扱うのか見ものである。

統計でみた選挙のしくみ―日本の選挙・世界の選挙 (ブルーバックス)