来夏の参議院選挙に向けて「1票の格差」を是正する選挙制度改革が議論されている。最近は国政選挙が実施されるたびに、市民団体から「1票の格差」の違憲性を争う訴訟が起こされている。選挙結果が無効とされたことはないが、最高裁判所で「違憲状態」と判断される事態が続いている。
10増10減案とは
さすがに違憲状態が続くのはマズいと思ったのか、自民党は「鳥取と島根」「徳島と高知」の各選挙区を統合(合区)し、選挙区定数を「10増10減」とする案を決めた。
憲政史上初めて、参院選で隣り合う人口の少ない県を統合して新たな選挙区をつくる「合区」が導入される見通しだ。詳しくは下図を参照してほしい。この改革案で最大格差は2013年にあった参院選の4.77倍から2.974倍に縮まるという。
▲10増10減案(出典:産経新聞 2015年7月10日付)
驚いたことに、この改革案では最初から最大格差は2倍を超えている。衆院選では「1票の格差」が2倍を越えた事例について「違憲状態」と判決がでているので、本当にこれでいいのだろうか。直感的にも最低でも2倍以内に抑える必要があろう。
「地方創生」に逆行するのか?
この改革案に対して「地方軽視」だとか「地方創生に逆行する」などという政治家が散見されるが、まったく理屈が理解できない。
民主主義の基本である「1票の重さ」をできるだけ揃えようとすることが、どうして「地方軽視」になるのだろうか。そして「地方創生」は経済政策であり、選挙制度とはまったく次元のちがう話である。
そもそも国会議員は選挙区の代表ではなく、国民全体の代表であることを忘れている。いまはネットに記録が残るから便利なったが、既得権益にしがみついて選挙改革を「地方軽視」「地方創生に逆行する」などと言っている政治家は誰なのかよく覚えておくといいだろう。
国会で選挙制度を改革するのは無理
選挙改革の議論を聞いて思うのは、利害当事者である国会でまともな結論が出せるのだろうかという根本的な疑問である。犯罪者が刑法をいじるのにも等しい。
第三者機関で決めたことには必ず従うとか、数学的というか機械的に「1票の格差」を最小化するルールを導入するとかできないものだろうか。