退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『喜劇 とんかつ一代』(1963) / 森繁久彌が歌う「とんかつの唄」が楽しい

新文芸坐の《川島雄三鈴木清順 絶対熱烈支持宣言》で映画『喜劇 とんかつ一代』 (1963年、監督:川島雄三)を鑑賞。

上野のとんかつ屋の主人・五井久作(森繁久彌)と柿江(淡島千景)の夫婦に、周囲のさまざまな人が入り乱れての喜劇映画。「駅前シリーズ」の系譜だろうか。

冒頭からタイトルバックに流れる森繁が歌う主題歌「とんかつの唄」にノックアウト。「とんかつが食えなくなったら死んでしまいたい~♪」のフレーズが耳の残る。

五井はもともとは大きなレストランのコック長(加東大介)のもとでフランス料理の修行をしていたが、コック長の娘の柿江と駆け落ちして、いまは上野でとんかつ屋を営んでいる。主人の友人でブタの屠殺の第一人者の山茶花究、その娘はセクシーな団令子、その恋人はコック長の息子のフランキー堺らの共演者が入り乱れる。

とくにクロレラ研究に没頭していて、なんでもクロレラ食品にしてしまう、三木のり平池内淳子の夫婦がおかしい。また謎のフランス人を演じる岡田真澄にも注目したい。喜劇役者たちが芸を競い合う楽しくも呑気な映画。

この作品は東京五輪に向けて日本が邁進していた頃の映画。映像を見るとたしかにいまの日本は物質的には豊かになったように見えるが、本当にこれでよかったのか。何か忘れてきたのではないか。そんなことを考えさせる映画でもある。

ちなみに併映が『とんかつ大将』(1952年)だったので、当日はとんかつ二本立てでした。

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