退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ロシアによるウクライナ侵攻に思うこと

ロシアは24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いている。当初、すぐにウクライナは降伏すると思ったが、この記事執筆時点でキエフは陥落していない。

テレビのコメンテーターが、この紛争を「古典的な大規模戦闘」と表現していたが、機甲師団が隊列をなして侵攻している映像は前世紀の戦争の「電撃作戦」が思い起こさせる。

ただし現代戦においては、ジャベリンのような高性能な歩兵携行式ミサイルが普及しており、対空・対地ともに昔のように戦闘ヘリコプターや戦車で敵陣地に突撃すればいいというわけではない。こうした戦術的評価は個人的にはとても興味深いが、それはひとまず措いて今回の侵攻について思ったことを述べてみたい。

まず「国連は役に立たない」ということ。これは以前より国連の根本的な問題点として指摘されてきたことであり、安全保障理事会常任理事国が拒否権を持っているため、常任理事国が当事国場合、国連はまったく機能しない。今回も決議案に対してロシアが拒否権を発動している。

つぎに「保有国には誰も手を出せない」ということ。他国を侵略するような無法者に対しては、いままでは国連軍を出せなくても、多国籍軍が結成されてゴロツキ国家を成敗することがあった。しかし、核兵器保有国に対してはそうはいかない。直接的な武力衝突は核戦争に至るリスクがあるり、核兵器保有国には手出しできない。北朝鮮を始めとして核武装したい国が絶えないのも納得できる。

最後に「経済制裁が効くのは時間がかかる」ということ。上記の理由によりNATOアメリカも直接武力行使しないと名言している。そうなると経済制裁となるわけだが、これは効果が出るのには時間がかかる。今回の侵攻を直ちに止めることはできない。しかもロシアがグローバル経済の一角を締めている以上、それは諸刃の剣である。欧州はエネルギーの多くをロシアに依存しているし、日本にもロシアとの貿易でビジネスをしている企業も少なくない。

さてロシアのどこまでやるつもりなのだろう。当初の目論見より苦戦しているように見受けられる。ロシアが本気を出せば、戦略核を使うまでもなくキエフを灰燼に帰させることは容易であろう。プーチンの面目を保ったうえで停戦するのは容易ではない。戦争が集結するときに、ウクライナはどのような国になっているだろう。

また、とくに日本のメディアを見ていると、欧米寄りの報道が目立つ。ロシアにも言い分があると思うが、プーチンが悪魔のように報じられるだけで、ロシアの事情が伝わってこない。その点はおおいに不満である。

ルポ プーチンの戦争 ──「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか (筑摩選書)