退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『陸軍残虐物語』(1963) / 白黒映画でよかったなぁ

新文芸坐の《日本国憲法施行70周年記念 映画を通して反戦と平和を希求する映画祭》で映画『陸軍残虐物語』(1963年、監督:佐藤純彌)を鑑賞。佐藤純彌監督のデビュー作。白黒映画。

昭和19年、補充兵として召集された冴えない二等兵・犬丸(三國連太郎)は、古参の亀岡軍曹(西村晃)に徹底的にしごかれる。制裁や拷問は当たり前。理不尽な軍隊の実相がこれでもかとばかり描かれる。極めつけは糞尿の中で小銃の部品をさがすシーン。こればかりは白黒でよかった。

それでも百姓出で朴訥な犬丸は厳しいしごきに耐えていたが、面会に来た妻(岩崎加根子)が亀山に強姦されるにいたり、ついに怒りを爆発させ亀山を殺害して師団から脱走してしまう。憲兵の捜索の網をかいくぐり自宅に戻るが、そこで彼が見たのは妻の首吊りした姿だった。ついに憲兵に見つかるが逆上した犬丸は銃剣で自決するのだった。

タイトルどおり救いようのない話だが、後年水戸黄門を演じた西村晃の怪演が光る。三國連太郎との身長差も絵として面白い。こんなブラック組織で勝てるのと思うが、建軍以来このやり方で勝ち続けてきたのだから組織の体質が変わるはずもない。劇中、上層部からは制裁禁止の通達が出されていることが示ささるが、現場では意に介さない様子だった。


陸軍残虐物語(プレビュー)

余談だが、後で見た予告編には犬丸の妻が強姦されるシーンがあったが、本編では省略されていた。劇場で見たときやや分かりにくいなと思ったが、なぜ省いたのかだろうか。他は過激なシーンが満載の映画なのに、そこだけ緩むのは理解できない。

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