退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房、2021年)

ロシアのウクライナ進攻により、注目を集めている小説『同志少女よ、敵を撃て』を読んでみた。2022年本屋大賞受賞作。

1942年、独ソ戦が激化するなか、モスクワ近郊の農村に暮らしていた少女セラフィマの人生は一変する。襲来したドイツ軍により母親や村人たちが惨殺されてしまう。自身も射殺されようとするとき、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。セラフィマはイリーナから狙撃兵になる訓練を受け、やがて激戦地スターリングラードに向かうが……。

本を手にとったとき500頁近くある分厚い本だったので、「うーん、これは歯ごたえがありそう」と思ったが、存外読みやすい。昔、ロシア文学を読んでいたころを思い出すような人名のややこしさを除けば、ラノベ感覚でスラスラ読める類の読み物である。話は直球でひねりがなく、結末が予想できてしまい内容は薄い。

そのままアニメ化できそうだと思ったが、逆になんとなくアニメや映画のノベライズのようにも思えた。実際に実写化するとなれば大掛かりになりすぎて難しいだろうが、アニメ化はあるかもしれない。このままだと凄惨すぎるということはあるかもしれない。

戦記物としてはよくまとまっている。地図や兵器の情報を調べながら読み進めていくと最後まで楽しめる。

気になったのは、ソ連軍に女性狙撃兵は実在しており、それはソ連軍だけに見れれる点だ。この本のなかで、なぜソ連軍だけ女性狙撃兵が存在したのかという問いに答えてくれるかと思いなが読んでいたが、結局答えは得られなかった。物語では一貫して女性の立場を取り上げていたのにも関わらず、深堀りされていないのは残念。

それにしても、この小説はロシアのウクライナ進攻で脚光を浴びてずいぶんと得をしたものだ。運も実力のうちということか。