新文芸坐の《新春名作劇場 銀幕の戦う男たち》という企画で映画『戦争のはらわた』(1978年、監督:サム・ペキンパー)を鑑賞。DCP上映だったので鮮明な映像を堪能できた。当日の併映作は『コンボイ』でペキンパー監督の2本立て。
1943年、第二次世界大戦のロシア戦線。ソ連軍と対峙するドイツ軍中隊にシュトランスキー大尉 (マクシミリアン・シェル)が司令官として赴任してくる。中隊で部下からの人望の厚いシュタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)は、すでに軍功もあげており軍上層部にも一目置かれる叩き上げの軍人だった。シュトランスキーは、自らの名誉欲からドイツ軍の最高の栄誉「鉄十字勲章」欲しさにシュタイナーに取り入ろうとするが、シュタイナーは決してそれに乗らない。次第に二人の間に決定的な確執が生まれるが……。
残酷シーンとスローモーション撮影を巧みに組み合わせて編集する、サム・ペキンパー監督が確立した手法を戦争映画に適用した記念碑的戦争アクション映画。CGなどない時代に凄まじく迫力のある映像に仕上がっている。初めて見たときは本当に怖かった記憶がある。
ラストが圧巻。シュタイナーが敵地からソビエト軍の軍服を着て戻ると本隊に連絡したにもかかわらず、シュトランスキーの命令によりドイツ軍はシュタイナー小隊に対し機関銃を掃射する。目の前で部下たちが次々に死んでいくのを目の当たりにしたシュタイナーは、帰還後怒りにまかせてシュトランスキーに「借りを返す」かと思いきや、シュタイナーはシュトランスキーに「あんたが俺の小隊」だと告げ、襲い来るソ連軍に向ってふたりで飛び出していく。ジェームズ・コバーンがかっこいい。
まあ細かいことを言えば、ドイツ軍の視点で描かれているのに英語劇なのはどうかと思うが、セールスを考えると仕方ないのだろう。さすがに劇中歌だけはドイツ語が使われている。最後にブレヒトを引用するあたりも洒落ている。
ちなみに、この映画の原題はCross of Ironといい「鉄十字勲章」の意だが、「戦争のはらわた」というよく分からない邦題がついている。ショッキングな映像から、この邦題になったのだろう。今のように何でもカタカナで済ますよりマシなのかもしれないが、当時のオカルトブームが便乗したたのだろうかとも勘ぐってしまう。不思議な邦題だが、いまではすっかり定着しているところをみると先見性があったのだろう。