退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】眞邊明人『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版、2021年)

めちゃくちゃ売れているというので読んでみた。日本史における英傑たちがAIによって蘇り、内閣を組織してコロナ禍の日本の政治を担うというアイディアは面白い。タイトルどおり総理大臣は徳川家康

物語の根底にあるのは現代日本の政治に対する痛烈な批判であろう。新型コロナウイルス感染症に対する自民党政権のグダグダぶりにはいい加減ウンザリしている人も多いだろう。いまの政治に対する不満を英傑たちの言動を通して見事に表現している。

まあ現実はこの物語のように単純ではないだろうが、ミステリー仕立ての後半も含めてエンターテイメントとしては十分に楽しめる。映像化はむずかしいかもしれないが、ぜひ映画化してほしい作品である。

ただ「ビジネス小説」という銘打つには幼稚だし、むしろラノベのように思える。薄っぺらい。作者のプロフィールに柴田錬三郎を尊敬しているとあったが……。これでいいのか。

その分、読みやすいとも言えるが、せっかく登場する多くの歴史上の英傑の人物描写が十分ではないのは残念。全体の尺が短いので仕方ない面もあるだろうが、歴史ファンには物足りないだろう。

それでも現代日本のさまざまな問題を鋭く指摘しているのは評価できる。一読あれ。