退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

宮沢りえ・寺島しのぶのダブル主演のテレビドラマ『女系家族』を見る

先日、テレビ朝日で2夜連続で放送されたテレビドラマ『女系家族』(2021年)を鑑賞。原作は1963年に刊行された山崎豊子の同名小説。宮沢りえ寺島しのぶのダブル主演。ドラマの舞台は2014年の大阪に設定されている。

女系が続く老舗問屋の養子婿が死んだことで巻き起こる娘たちの遺産相続争いを描く。遺産相続は古今東西を問わず普遍的なテーマであるし、最後のどんでん返しは、「3倍返しだ!」とかいうドラマが人気を博した現代でも十分通用する面白さがある。「山崎豊子は天才!」ということに尽きる。

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プロットが面白いのは間違いないが、設定や演出は難が目立つ。

まず設定だが、「大阪・船場の老舗木綿問屋」をそのまま21世紀の現代に持ってきてもまったくリアリティに欠ける。どんな商家なのか想像できる人はどれだけいるのだろうか。明らかに無理がある。その時点で芝居に入り込めない。ちなみに2005年にTBSがドラマ化したときは、舞台を東京・日本橋に置き換えている。

次にキャストの話す大阪弁がおかしい点も指摘したい。私はネイティブではないが、数年ほどの関西勤務のときに関西弁に接してことがあるが、その私からしてセリフを落ち着いて聞いていられない。ネットにもこのことを言っている人が多数いて、やっぱりおかしいのかと思った。大阪弁で芝居をつくるなら、ネイティブの俳優を集めるか、徹底的にトレーニングしてからにしてほしいものだ。雑すぎる。

最後に矢島三姉妹の叔母・矢島芳子(渡辺えり)と矢島家の大番頭・大野宇市(奥田瑛二)のキャスティングにも不満がある。この二人がこの作品の真のキーパーソンである。1963年の大映映画『女系家族』(監督:三隅研次)では浪花千栄子中村鴈治郎がそれぞれで演じていた。この二人と比べるのは酷なのかもしれないが、大映映画ファンとしてはお手本がありながらどうしてこうなったと言いたくなる。奥田瑛二はかっこよすぎるのもミスキャストに思える一因かもしれない。

原作者の山崎豊子が存命ならば、ドラマ化を許しただろうかと思わせるドラマだった。最近そういうのが多い。2021年に放送されたTBSドラマ『日本沈没ー希望のひとー』も小松左京が映像化を認めただろうかというような変なドラマだった。昭和の遺産が食い荒らされている。