デビュー40周年にちなんで、日髙のり子自身がセレクトした 40 曲を収録された記念盤。「タッチ」の作者、あだち充の描き下ろしのジャケットがまぶしい。本人の特徴を掴んでいるのはさすが。
Noriko Hidaka All Time Best ~40 Dramatic Songs~(特典なし)
- アーティスト:日高のり子
- 発売日: 2020/12/02
- メディア: CD
2枚組。1枚目は「Myself(アーティストセレクト)」、2枚目は「My Dear(キャラソン&アニソンセレクト)」という構成。テキトーなベスト盤が多いなか、本作はていねいにつくられた記念盤で、日高のり子のこれまでの歩みを感じられる。リーフレットに、1曲ずつに彼女のコメントと初出データが載っているのがよい。すべてのベスト盤はこうあべき。
活動期間が長いので、世代によって心に残っている曲はちがうだろうが、私がこれは外せないなと思った楽曲を3曲挙げる。
もう一度・ブラックコーヒー(1981年、2nd シングル)
アイドル時代のセカンド・シングル。日高のり子がアイドル歌手だったこと、NHKの歌番組「レッツゴーヤング」の「サンデーズ」のメンバーだったことを知っている人も少なくなったのではないか。
リーフレットのコメントにあった、「レッツゴーヤング」のなかでカフェテリアのセットで男性が差し出したプレゼントを返して、別れたことを表現したのち、やわら立ち上がって歌い出すという演出は見た記憶がある。
「もう一度・ブラックコーヒー」という楽曲は、のちにアイドルのコンピレーションアルバムに収録されるほどの名曲。80年代アイドル曲の様式をいまに伝えている。しかしジャケットは「これどうなの?」という写真でズッコケたことも覚えている。アイドル激戦区だった当時、これで生き残れるはずもなく、アイドルとしては短命でおわる。いまから振り返ると、これでかえってよかったのかも……。
タッチ(1987年、アルバム『浅倉南 Touch in Memory』)
日高のり子といえば、代表作は『タッチ』(浅倉南)である。「タッチ」は、あだち充の原作マンガ、そしてテレビアニメともに人気を博し社会的ブームとなった。テレビアニメの主題歌「タッチ」も、岩崎良美の歌唱によりスマッシュヒットとなる。
このアルバムに収録さている版は、日高のり子が浅倉南として歌っているバージョン。この曲のほかにも「タッチ」からの楽曲が数曲収録されている。まさに彼女の人気を決定づけた作品といえる。岩崎良美の歌唱と比べて聞いてみるのも一興。
トップをねらえ!−FLY HIGH−/日高のり子、佐久間レイ(1989年『トップをねらえ!』)
全6話のOVAとして製作されたSFロボットアニメ「トップをねらえ!」の挿入歌。このアニメは、いまは押しも押されもせぬ巨匠となった庵野秀明の初監督作品。
アニメの主題歌とエンディングテーマを酒井法子が歌っている。主人公のタカヤ・ノリコと、それを演じる声優の日高のり子、そして主題歌を歌うアイドル歌手の酒井法子。この「トリプルノリコ」でアニメを売り出していたのは、ほろ苦い思い出。その後、のりピーは……。
この曲の作曲・編曲は田中公平が担当している。すごい才能が集まって作られたオタクのためのアニメ作品。こうした企画がまかり通ったのはいい時代だった。
ちなみに、この曲でデュエットしている佐久間レイも「サンデーズ」のメンバーだった。人の縁とはわからないものである。随分経ってから、ふたりがこの曲をステージで歌っている映像を見たことがあるが、「昭和生まれの声優はすごいなぁ」と感心したものだ。機会があればぜひ。