先月、新文芸坐の《若山富三郎主演 「子連れ狼」 壮絶!一挙上映》という企画で、映画『冥府魔道』(1973年、監督:三隅研次)を鑑賞。原作は小池一夫原作・小島剛夕画の時代劇劇画。全6作つくられた若山富三郎主演、「子連れ狼」シリーズ第5作。
筑前黒田藩には世継ぎが女児であるという重大な秘密を抱えていた。拝一刀(若山富三郎)は、黒田藩からその秘密を暴く密書を携えた高僧(大滝秀治)を討ち、密書を奪うことを依頼される。その高僧の護衛には宿敵・柳生烈堂(大木実)の一門があたっていた。黒田藩のお家騒動を背景に一刀と烈堂との戦いが繰り広げられる……。
監督に三隅研次が復帰。第5作にしてマンネリ感が漂ってくるが、時代劇映画の楽しみは味わえる秀作。
まず黒田藩からの刺客依頼が分割払いなのが笑える。一殺五百両のところ黒田藩からの腕試しの使者はぞれぞれ百両ずつしか持ってこない。5人倒してやった依頼成立。まどろっこしい。
黒田藩にあって武勇名高い黒田二十四騎が騎馬隊で登場するのが見どころ。黒尽くめの装束に槍で武装して騎乗している姿は勇壮。黒田二十四騎は、当初一刀を助けるが話がもつれて結局一刀と敵対することになる。しかしせっかく騎馬なのに決戦場が城内なので下馬しての戦いだったのはがっかり。騎馬隊と一刀の対決が見たかった。
また高僧を暗殺するくだりでは、「仏に逢うては仏を殺し、親に逢うては親を殺し…」という名ゼリフが登場する。タイトルにある「冥府魔道」をよく言い表している。この映画でも刺客道とはいえ、黒田藩の世継ぎに据えられた頑是ない女児を斬り捨てる不条理なシーンがあり胸を打つ。まさに「冥府魔道」そのものであり、よく出来た脚本である。