退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【訃報】田村正和さん死去

多くのテレビドラマで活躍した田村正和さんの訃報が届いた。77歳。スーツが本当に似合う二枚目俳優だった。

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田村正和さんは、往年の映画スター・阪東妻三郎の三男として生まれ、兄・田村高廣、弟・田村亮とともに芸能一家として知られる。映画にも多数出演しているが、テレビでの活躍のほうがよく知られている、テレビ時代の俳優と言ってもよい。

代表作はなんと言っても「古畑任三郎」だろうが、その他にも「眠狂四郎」「パパはニュースキャスター」「ニューヨーク恋物語」などさまざまなジャンルの作品に出演した。追悼で放送された「徹子の部屋」では、本人はコメディーより大人のラブストーリーが好きだったと言っていたが、コメディーのほうがウケがよかったようだ。

いよいよテレビ時代に活躍した人たちが鬼籍に入るようになった。時の流れはは速い。
ご冥福をお祈りします。

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さきほど田村正和さんはテレビ俳優だったと書いたが、映画ファンとしては映画作品のなかから、追悼としていま見てみたい作品を3つ挙げてみたい。

痴人の愛(1967年、増村保造

原作は谷崎潤一郎の同名小説で、何度も映像化されている。そのなかでも増村版はヘンタイ性が強く、ナオミに安田道代、河合に小沢昭一が配されている。田村は、ナオミを取り巻く男友だちのひとり浜田青年の役。軽い現代の若者役がぴったりで、成城学園出身の育ちのよさが自然に出ているようで面白い。

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女囚さそり 701号怨み節(1973年、長谷部安春

梶芽衣子主演の「さそり」シリーズ第4作。田村正和細川俊之の二枚目ふたりが梶芽衣子の怨念パワーにコテンパンにやられる話。田村は、かつて仲間を売った元活動家を演じている。上京してきた母親に泣かれて、ナミを裏切って居場所を白状するというヘタレぶりで、裏切りを許さないナミに刺殺される。ニヒルな二枚目俳優としてテレビドラマで活躍する田村からは想像できない汚れ役は必見。急所に熱湯をかけられる田村は他では見られない。

子連れ狼 その小さき手に(1993年、井上昭)

小池一夫小島剛夕の漫画『子連れ狼』を原作とする時代劇映画。田村は主役・拝一刀役。私は、拝一刀はなんと言っても若山富三郎だろうと思っているが、原作者・小池一夫田村正和を推していたらしい。

田村は「眠狂四郎」などテレビ時代劇にも出ているが、決して殺陣が上手いとは言えない。それでも「愛」をテーマにした新しい子連れ狼像をつくるというコンセプトで撮られたという。この作品を見たとき、あまりに期待と違っていて「こんなの子連れ狼じゃない」と思った記憶があるが、いま見るとどう思うのだろうか。いまいちばん見てみたい映画である。

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