退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『女囚さそり 701号怨み節』(1973) / シリーズ第4弾。梶芽衣子版の最終作

新文芸坐で開催中の《CD「追憶」発売記念&梶芽衣子著「真実」刊行記念 梶芽衣子映画祭》で、映画『女囚さそり 701号怨み節』(1973年、長谷部安春監督)を鑑賞。篠原とおる原作のコミックの映画化。東映映画。併映は『野良猫ロック セックス・ハンター』だったので長谷部監督の2本立てだった。

教会の結婚式のなかに身を隠していた脱走中の松島ナミ(梶芽衣子)を、児玉警部(細川俊之)が逮捕するが移送中にあっさり逃げられる。手傷を負ったナミを、元過激派活動家でいまはストリップ小屋の照明係をしている工藤(田村正和)が匿う。共に官憲に追われる身で共感して心を許し合うが……。


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ざっくり田村正和細川俊之の二枚目ふたりが梶芽衣子の怨念パワーにコテンパンにやられるという話。

とくに田村正和がいい。かつて仲間を売った元活動家を演じていることに注目。上京してきた母親に泣かれて、ナミを裏切って居場所を白状するというヘタレ。ラストは裏切りを許さないナミに刺殺される。後年、ニヒルな二枚目俳優としてテレビドラマで活躍する田村からは想像できない小汚い役を熱演している。

時代的には全共闘世代が敗北したリアルな世相を反映しているが、フィクションの極地ともいえる「さそり」との食い合わせは悪い。どこにも着地点がなくて悲劇的な結末となるのは必然か。このあとナオミは何を信じればいいのか。

本作が梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズ最終作である。梶芽衣子著の『真実』によれば、シリーズを降りたいという梶が長谷部監督がメガホンを取ることを条件に最終作への出演を受諾したという。前作までの伊藤俊也監督とは一味ちがったナミを見ることができる。

ナミが過激派に心を許したり、恋愛沙汰に翻弄されたりするのは、これまでのナミのイメージと違うが、娯楽映画としてはよくできていて楽しめる。好きな映画のひとつである。梶芽衣子の眼光に秘められた怨念パワーは大したもので、ぜひスクリーンで確認してほしい。

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