新文芸坐の《追悼・黒澤満 70年代以降、日本映画の新しい地平を拓き多くの才能を輩出させた名プロデューサー》という企画で、映画『あぶない刑事』(1987年、監督:長谷部安春)を鑑賞。主演は舘ひろしと柴田恭兵。
横浜を舞台にタカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)、二人のコミカルな掛け合いとアクションが懐かしい。日本テレビ系のテレビドラマシリーズの劇場版第1作。日本の刑事バディものとして記憶に残るが、いま見るとバルブ期の世相を反映してかあまりにも軽薄で驚く。
製薬会社の研究者を殺して株価操作を企てるというプロットも株価高騰に湧いていたバルブ期真っ只中の日本を表してかのようだ。あと時代を感じるのは小野みゆき。当時の“いい女”のシンボルだったなと見返すのも一興だろう。
ストーリーは何のひねりもなく一直線。あまりに単純で観客を見くびっているのかと思わせるほど。まあストーリーなどはどうでもよくて、「ヘイ、タカ」「何だいユージ」という、テレビドラマからの延長線にある二人の掛け合いを楽しむための映画なのだろう。職人監督の長谷部安春が無難にまとめているが、懐かしさ以外に見るべきものはほとんどない。
当時、バブル期で予算は潤沢にあっただろうに、こうした映画しかつくれなかったのは日本映画の限界だろうか。それでもタカとユウジのコンビを誕生させたことは、黒澤満プロデューサーの業績のひとつとして記憶されるだろう。