退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『野良猫ロック セックス・ハンター』(1970) / シリーズ第5弾。精悍な安岡力也がかっこいい

新文芸坐で開催中の《CD「追憶」発売記念&梶芽衣子著「真実」刊行記念 梶芽衣子映画祭》で、映画『野良猫ロック セックス・ハンター』(1970年、長谷部安春監督)を鑑賞。全5作が公開された「野良猫ロック」シリーズ第5弾。70年代の日活映画らしいアクション映画。

当時、米軍基地があった立川が舞台。基地跡は後に国営昭和記念公園となるが、いまの立川とのあまりの違いに驚かされる。ちなみに立川基地が全面返還されたのは1977年、公開時はすでに米軍による飛行活動は停止されていた。誇張されているにしても、当時の立川を見るだけでも映画を見る価値がある。

野良猫ロック セックス・ハンター [DVD]

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  • 発売日: 2012/04/03
  • メディア: DVD

酒やドラッグにふける若者や米軍人とのハーフで溢れる基地の街・立川。ハーフの数馬(安岡力也)は生き別れになった妹を探しに立川にやってきて、不良少女グループのリーダー・マコ(梶芽衣子)に出会う。一方、混血児を異常なまでに嫌うバロン(藤竜也)が率いる不良少年グループは、逆恨みで辺り構わず「ハーフ狩り」を始める。マコとバロンが深めるなか、数馬の妹がマコのグループにいることがわかる。やがて基地跡の飛行場での最終対決を迎えるが……。

「セックスハンター」というタイトルが強烈だが、性描写はほとんどなく、ただの若者同士の小競り合い。公開当時、釣られたと思った人は多いのではないか。ポスターも完全に釣り。むしろ乱痴気パーティー(死語)でマワされそうになった、マコの仲間の少女たちの貞操に対する保守的な考えかたに時代を感じる。

マコ役の梶芽衣子も孤独で気高い女を好演しているが、やはり精悍な安岡力也がかっこいい。これは後の彼のイメージとのギャップによるところが大きいが、一見の価値がある。しゅっとして男前だ。

ラストの飛行場跡での対決シーンは、なぜか銃撃戦となり西部劇のようになる。バロンと相討ちになった数馬が死に際に妹を撃つシーンがあるが、作者は何を言いたかったのか理解不能。そのあとにマコがやれやれと面持ちで、例の帽子をかぶり頭を垂れたところに帽子に重ねて「終」のテロップが出る。なかなかイカしたエンディング。


「野良猫ロック セックス・ハンター」(公開年月日 1970年09月01日) 予告篇

ただのアクション映画と思って観たが、当時の日米関係や戦後の人種問題など社会性が多分に込められている。70年代らしい映画とも言えるが、いまだに米軍基地が返還されない沖縄では、この映画の立川でみたような雰囲気が残っているのだろうか。そんなこともあるまいと思うが、少し考えさせられる映画である。

余談だが、劇中にゴールデン・ハーフが『黄色いさくらんぼ』を歌うシーンがあった。ハーフ狩りと騒いでいるのにゴールデン・ハーフが出演してよかったのだろうか。もっと言えば、「ハーフ」という言い方もどうかと思う。英語では混血のことをmixedというが、日本語でも「ミックス」と言い換えたほうがいだろう。

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映画『野良猫ロック セックス・ハンター』(1970年)