退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『劇場アニメ 君の膵臓をたべたい』(2018) / 丁寧につくられた病気ヒロインの生を描いた青春ストーリー

録りためてあったなかから『劇場アニメ 君の膵臓をたべたい』(2018年、監督・脚本:牛嶋新一郎)を鑑賞。原作は住野よるの同名小説。タイトルにわざわざ「劇場アニメ」とついているのは、アニメ公開前の2107年に実写版が公開されたためだろう。どうして実写版とアニメ版を同時につくらなければいけないのかわからない。

他人に興味をもたず、いつもひとりで本を読んでいる高校生の「僕」(声:高杉真宙)は、ある日、病院の待合室で一冊の文庫本を拾う。手書きの文字で『共病文庫』と題されたその本は、クラスの人気者・山内桜良(声:Lynn)が密かにつけていた日記帳だった。桜良は、日記の内容を目にした「僕」に自分が膵臓の病気で余命わずかであることを告げる……。


劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」本予告

原作は未読だが、実写版よりアニメ版のほうが実写に忠実であり、アニメーション企画は原作小説が出版される前から始まっていたという。構成はよく練られている。

ヒロインの存在そして死が、コミュ障の「僕」を内面を次第に変えていく過程が緻密に描かれているがよい。ヒロインが病気で余命わずかという物語は定番であるが、ヒロインの相手役である「僕」視点で描かれている点はユニークと言える。

とくに二人きりのときのふたりの会話劇がすばらしい。やや現実離れしている気もするが、フィクションなのでこれぐらいでいいのだろう。アニメならでは演出とも言える。悲恋モノとしても見ることができるだろう。

肝心の「僕」を演じているのは、声優初挑戦の高杉真宙で大丈夫かなと思って見たが、慣れていないためか、変に擦れていない点が本作では奏功しているように思えた。

キャラデザイン、作画、音楽も高い水準にあり、十分に満足した。まあ一言いえばキャラデザインについては、「僕」が今風のイケメン過ぎるのは気になった。どうしても「ただしイケメンに限る」という言葉が思い浮んでしまうが、これはやっかみだろう。

テーマが重いのでタイミングを選ぶかもしれないが、多くの人にメンタルが安定しているときに見てほしい佳作である。