退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『あいつと私』(1961) / 石原裕次郎主演だがオレ的には芦川いづみを愛でる映画

石原裕次郎主演の日活映画『あいつと私』(1961年、監督:中平康)を鑑賞。原作は石坂洋次郎の同名小説。

裕福な家庭に育った大学生・三郎(石原裕次郎)は、大学の授業中に夜の女を買ったことを告白する。女子大学生たちから吊るし上がられ、挙げ句プールに突き落とされてしまう始末。そんな彼に助け舟を出したクラスメートのけい子(芦川いづみ)と親密になり付き合い始める。しかし豪放で底抜けに明るくみえる三郎には性のトラウマや出自の秘密があったのだ……。


あいつと私 予告篇

裕次郎の弾けるような若さ、底抜けの明るさがまぶしい。こういうブルジョア大学生を演じると裕次郎の右に出る者はいない。この明るさと対照的に、主人公・三郎のトラウマや出自の秘密といった影の部分も描かれていて、三郎を人間として一層魅力的にみせている。

それでも男性目線では、裕次郎よりヒロイン・芦川いづみに目が行くのは必然。小顔でキュート。タイトルのとおり芦川の独白でストーリーが進行するのもよい。いまでも時々名画座で「芦川いづみ特集」が組まれるのも納得だ。いまでも十分に通用するキャラクターだろう。

ブルジョア大学生たちは鼻持ちならないし、性に開放的にすぎる内容も時代が考えるとどうだったのだろうと思ってしまう。極めつけは日米安保に対する劇中でのお気楽さである。ノンポリの学生はこんなものだったのかもしれないが、左右どちらからも軽すぎると糾弾されそうあ。

それでも中平康の過剰とも言えるテンポの良さや、セリフの切れ味のよさは楽しめる。スピーディな演出は現代的と思えるほど。当時の風俗はすっかり陳腐に感じられうが、演出だけいまでも斬新に思える。その点は裕次郎主演作のなかでも屈指の作品ではないか。おすすめです。