DVDで映画『にごりえ』(1953年、監督:今井正)を鑑賞。樋口一葉の短編小説「十三夜
」「大つごもり」「にごりえ」の3編を原作とするオムニバス形式で映画化。白黒映画。
文芸作品の映像化作品には陳腐なことも多いが、本作は映像的にも見どころが多い。古いイタリア映画のようなシーンも見つけることができる。文学座の役者たちの演技はさすがだが、人によっては鼻につくかもしれない。
明治時代の人たちの生き様がよく描けているのは美点。また本作ほどオムニバスのつながりが自然な日本映画はめずらしいのではないか。
映画ファンとしては、のちに日本映画を支えた役者たちの若い頃を見れことができるのは楽しい。DVDのジャケットは山村聡と淡島千景だろうか。文学座の俳優が総出演しているのは貴重。
個人的には若き日の中村伸郎を見れたのがうれしい。のちにテレビドラマ「白い巨塔」で東教授を演じた役者であり、学者、弁護士、官僚などの知的な役柄を得意にしていたが、本作では「大つごもり」で女中みね(久我美子)の父親を演じている。