退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『座頭市牢破り』(1967) / シリーズ第16作・勝プロ第1回作品。意気込みは伝わるが説教くさい

新文芸坐の《生誕110年 巨匠・山本薩夫 反骨のヒットメーカー》で映画『座頭市牢破り』(1967年)を鑑賞。勝新太郎主演「座頭市シリーズ」の第16作。

座頭市牢破り <東宝DVD名作セレクション>

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2017/12/13
  • メディア: DVD

山本薩夫監督の座頭市はシリーズのなかでは異色作と言える。大原幽学をモデルにしたと思われる大原秋穂(鈴木瑞穂)がやたらと説教くさい。市に剣の虚しさを説いたり、「尊王で幕府でもない」とアナーキーを気取ったり、農民たちの連帯を唱えたりする。

さらに市は反権力の先鋒を担がされて、大原を江戸に護送する唐丸籠を襲撃して、護衛の役人たちをことごとく切り伏せる場面もある。市はこんなことしないのではないだろうか。

監督は大原幽学が好きなので座頭市に登場させたのだろうが、これまでの市のイメージとは相容れないように思う。まあ監督の作家性が出ているとも言えるだろうが……。

それでも娯楽作品としてはよくできている。とくに三國連太郎が演じるラスボスは秀逸。一見庶民の味方のふりをしていながら、十手を預かりヤクザと十手持ちの二足の草鞋を履き、権力を手中にした途端、庶民を悪しざまにする豹変ぶりは圧巻。

さらに遊女をロウソクでいたぶるドS役人役の西村晃のヘンタイぶりや、小判で三味線を弾く芸当をみせる勝新太郎など見どころは多い。

勝プロ第1回作品であり意気込みは感じられるが、観客が期待する座頭市とはちょっとズレている。

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※当日の新文芸坐は音響設備のトラブルで音声が劣悪だった。招待券をもらったから恨みはないが、作品とは一期一会だからやはり残念。こんなツイートがあったが、「了承」はできないなぁ。事前にわかっていれば、わざわざ観に行かなかっただろう。

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