退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『にせ刑事』(1967) / 勝新太郎の魅力全開の娯楽映画

新文芸坐の《生誕110年 巨匠・山本薩夫 反骨のヒットメーカー》で映画『にせ刑事』(1967年)を鑑賞。勝新太郎の魅力を見事に捉えた山本薩夫監督によるプログラムピクチャー。

正義感に溢れた寅松(勝新太郎)は念願の刑事になったが、溺れた子どもを救っている間に拳銃を盗まれてあえなく警察をクビになる。やむなく実家の魚屋を手伝うが身が入らない。やがて寅松は誘拐事件に遭遇、刑事を詐称して独自に犯人を追う。持ち前の度胸と腕っぷしの強さで誘拐事件を解決してマスコミの称賛を得るが、警官詐称の罪で逮捕されてしまう。

まあこんな話だが、誘拐事件が起こるまでは結構面白い。列車でチンピラに絡まれている女子大生(姿美千子)を助けるも意図せずケガをさせてしまい、入院した姿に入れあげて熱心に見舞うあたりはちょっといい。

しかし子どもが誘拐されるあたりからトーンダウン。一応、誘拐事件に裏に潜む巨悪の存在を匂わせるのは監督らしいが不完全燃焼。社会性を帯びた作品にするには尺が短すぎる。また最後に主人公が大逆転するかと思いきや、逮捕されてそのまま幕を閉じるのも物足りない。

それでも勝新太郎の魅力は十分に感じられるし、姿美千子の美貌も楽しめるという点において娯楽映画としてはかろうじて及第点というところか。