退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ゴーン前会長の再逮捕で思ったこと/長期勾留は日本の国益を損ねる

保釈されるだろうという観測が流れていた日産自動車カルロス・ゴーン前会長が、12月21日、東京地検特捜部に特別背任の容疑で再逮捕された。11月19日に最初に逮捕されてから3度目の逮捕である。

金融商品取引法違反の容疑で2度逮捕されたゴーン前会長らの拘留延長の請求を東京地裁が却下したことから、マスコミは一斉に保釈される見込みだと報道していたが、それから一転再逮捕されて拘留がさらに延長されることになった。拘置所でクリスマスや新年を迎えることになる。

勾留が長期化することについて国際社会には批判的な意見が広がってきているが、地検幹部は「問題ない」と反論している。

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この記事によれば、東京地検幹部は「それぞれの国の歴史と文化があって制度がある。他国の制度が違うからといってすぐに批判するのはいかがなものか」と反論している。これは本当にグローバル化している国際社会に通用するのだろうか。また日本の国益を損なうことはないのだろうか。

拘留の長期化はこれまでも「人質司法」の問題が指摘され「冤罪の温床」ではないかという批判もあった。それでも国内で閉じているうちは大きな問題にはならなかった。しかし今回は国際的なエグゼクティブが関係する事件して国際的に注目を集めている。

日本の刑事司法制度がグローバル・スタンダードに適応できずに、他の先進国の基準から見ると人権侵害だということになれば、外国人たちは日本企業に関与するリスクを懸念することになるだろう。そうすれば優秀な人材が日本から離れていくことになる。

日産についても、カルロス・ゴーンが企業再生に取り組まなければ、いまごろ日産自動車の名前は消えていたかもしれない。今後、日本の刑事司法制度が障害になって、外国人が日本企業を敬遠することなれば、日本の国益が大きく損なわれることになる。

このように刑事司法制度が国際基準をまったく満たしていない場合、前世紀なら領事裁判権を要求されても不思議ではない。現代日本にはそうしたことは起こらないだろうが、日米安保条約地位協定との関連は無視できない。遅れた刑事司法制度に自国民の身柄を任せることはできない点では通底するものがある。

ゴーン事件が日本の司法制度を変革する契機になれば、意図したわけでないだろうがゴーン氏の貢献は大きい。ひょっとしたら日産を再生したよりも偉大な功績かもしれない。

カルロス・ゴーン経営を語る (日経ビジネス人文庫)