新文芸坐の《1997年に亡くなった三大映画スター 没後20年 三船敏郎・勝新太郎・中村錦之助》という企画で、映画『座頭市御用旅』(1972年、監督:森一生)を鑑賞。“座頭市”シリーズ第23作。
市は旅の途中で盗賊に襲われて息も絶え絶えの女に出会い、お産を助けるが母親は息を引き取る。母親に代わり、妹・八重(大谷直子)の許に赤子を届けることになった市は塩原に向かうが、母親を殺したと誤解をうける。塩原は目明かし藤兵衛(森繁久彌)が睨みを聞かせ平穏を保っていたが高齢による衰えは隠せない。そうしたなか年一度の祭りの利権を狙い凶悪なヤクザの親分・鳴神の鉄五郎(三國連太郎)が街に乗り込んでくる。
市が道中で旅人の死に際に立会い、その頼みを聞いて金や遺品を届けるというストーリーは定番だが、今回のようにお産に立会い赤子を届けるのはユニーク。
森繁、三國ら名優たちの助演、そして大谷と語り合うシーンなど見どころが多い作品。併映の勝新太郎の監督作品『座頭市物語 折れた杖』の演出が独特だったのに比べ、本作は落ち着いて見ることができる。
個人的には親分に雇われた居合の達人(高橋悦史)との道中での出会いのシーンが気に入った。ラストで、雇い主の親分が既に討たれているがそれでも市と対決する。逆光のなかで勝負は一瞬でついて終劇となる。もう少し高橋の芝居が観たかった。