百科全書から人工知能に至るまで、知識や情報がどのように“進化“してきたかを俯瞰できる。コンパクトにまとまっていて読みやすい。インターネット登場後の話はどこかで聞いたことのある内容が多かったが、それ以前の話の方が興味深かった。
- 作者:野口悠紀雄
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: 新書
活版印刷の発明により知識の伝達が容易になったのはよく知られているが、知識の拡散が知識を独占したいとする専門集団のため知識の公開が遅れた。そして、その最後の抵抗勢力が教会と大学だったという話は面白い。
またインターネットの登場により、知識・情報と一般の商品との違いが際立った、というのも重要である。排除可能性と限界費用の問題である。前者は「料金を徴収することができるか?」ということであり、後者は「利用者を1人増やすための費用が、ゼロに近いか?」ということである。
この本では排除可能性を説明する際、NHKの受信料徴収の難しさを例に挙げているが、これは地デジに移行したいまではスクランブルをかければいだけで、これをNHKがこれをしないのは別の問題であろう。
最終章でいま話題の人工知能についての著者の見立てが短く紹介されているが、人工知能に対して楽観的だったは意外だった。研究者の立場からすれば人工知能を利用してより創造的な仕事ができるとのことだろうが、多くの専門職を含めて社会全体に大きな影響をもたらすはずである。もう少し詳しい話を聞いてみたいところだ。