退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012) / 三島由紀夫x若松孝二

Amazonプライム・ビデオで映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を鑑賞する。インディペンデント映画の巨匠・若松孝二三島事件を追い、三島由紀夫の最期の日を映画化した話題作。

60年代後半、三島由紀夫井浦新)は、安保闘争学生運動などの左翼勢力の台頭を憂慮して、自ら行動を起こすことを決意し、自衛隊体験入隊したのち民兵組織「楯の会」を結成する。有事の際は自衛隊とともに治安出動して決起しようとするが、警察機動隊がことごとく事態を沈静化して、その機会を失して焦りを募らせる。1970年、三島は、学生長の森田必勝(満島真之介)ら楯の会4人とともに、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に向かう……。


「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」予告編 若松孝二監督作品

三島由紀夫の自決前の行動を、当時の左翼運動と絡めながら時系列で追っていく構成は、再現映像としては興味深いが映画としては物足りない。三島由紀夫の行動を監督がどう考えていたのか、それが伝わってこない。

キャスティングも不満。井浦新三島由紀夫はどうなのだろう。まあ誰が演じても本物の三島が持っていたであろう、知性やカリスマ性を演じきれるものではないだろうが、せめて肉体改造していた三島の肉体だけでも再現してほしかった。三島が学生とともにサウナで過ごすシーンがあったが、ここで鍛え抜いた上半身を披露するぐらいはできただろう。

さらに三島の妻を演じた寺島しのぶの扱いも中途半端で不満。遺族に対する配慮なのか終始及び腰に思えた。家族人としての三島をもっと見たかった。

また再現映像としてもかなり物足りない。市ヶ谷駐屯地で総監を人質に取った後、史実では幕僚たちと乱闘しているが、その部分はカットされている。さらにバルコニーから有名な演説をする場面では、ヤジを飛ばす自衛隊員の腑抜けた姿も捉えていない。

11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち

極めつけは自決の場面。三島の生首は有名なのにも関わらず映像化されていない。ここを撮らずにどうするのかと思った。若い頃の若松孝二ならきっと映像化してくれていたのではないか。そんなことを思った。

若松孝二監督作品なので、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』のような迫力で三島事件を撮っているのかと期待して見たがやや残念な作品だった。