退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『劇場版 タイムスクープハンター -安土城 最後の1日-』(2013) / NHKの人気番組の劇場版だが意外によかった

DVDで『劇場版 タイムスクープハンター -安土城 最後の1日-』(脚本・監督:中尾浩之)を鑑賞。2009年から2014年までNHK総合テレビで断続的に放送されていたドキュメンタリー風歴史番組の劇場版。

人気テレビ番組の劇場版が制作されることはよくありますが、成功例は少ないように思います。この作品もあまり期待しないで見ましたが、意外によかったです。

本作では、本能寺の変の直後から安土城が焼失するまでの時代を背景にしていますが、織田信長明智光秀豊臣秀吉などの歴史上の人物は登場しません。あくまでも「普通の人」の物語です。

本能寺の変で焼失を免れた茶器を守るのがミッションです。途中、茶器を狙うタイムスクープ社の社員が現れるなど、通常の放送にはない展開があり映画らしく仕上がっています。タイムスクープ社の様子が画面に登場するのもスペシャル感があります。

タイムスクープ社側は、レギュラーメンバーである時空ジャーナリスト・沢嶋雄一(要潤)と本部スタッフ・古橋ミナミ(杏)に加えて、新入社員・細野ヒカリ(夏帆)が沢嶋と同行していろいろな時代にタイムワープして活躍します。80年代にワープした際の夏帆のセーラー服姿も見どころです。上司役で宇津井健が出演しているのも見逃せません。これが宇津井の遺作になりました。

戦国時代の登場人物としては、本能寺に滞在していた商人・島井宗叱(上島竜兵)と、彼に同行する織田家家臣・矢島権之助(時任三郎)が挙げられます。時任はさすがにかっこいいし、上島も意外にいい味を出していてナイスなキャスティングです。上島は俳優業に力を入れればいいのにと思うほどです。なお島井宗叱(宗室)だけは実在の結構有名な歴史上の人物ですね。


劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日

テレビ番組のテイストを残しつつ、劇場版ならではの特別感を盛り込んでいて、なかなかよく出来た「劇場版」に仕上がっています。テレビ番組の「タイムスクープハンター」が好きだった人にはオススメできます。

エンドロールに、安土城がなぜ焼失したのかという謎解きの映像があるのも面白い工夫です。最後まで楽しめます。

ただし、よく出来ているのですが、映像的にはもっと冒険してほしかったなという思いもあります。思い切って時空ジャーナリストの視点、すなわちスマートグラスからの映像だけで、一本の映画を撮りきることはできなかったのだろうか。いわゆる主観ショット(POV方式)です。実験的な映像になるかもしれませんが、ぜひ挑戦してほしかった。そんなことを思いました。
「劇場版タイムスクープハンター安土城最後の一日」オリジナル・サウンドトラック